第4話

3日後の朝、『初心者の館』でお願いした鎧を受け取り装備した。


新装備

サラマンダーのレザーアーマー


確かに柔らかくて肩まわりの可動範囲が広くて、剣を振り下ろしても邪魔にならない。そして左の胸当てに少し薄い鉄板を入れて心臓の辺りを保護してくれてるようだ。

「胸当ての鉄板はサービスだ。オーガスタに聞いたが、君はどうやら今年期待のルーキーらしいね。」


「いいんですか?ここまで良くしてくれて。」


「構わんよ。どんどん活躍してこの店の宣伝をして欲しいからね。」


「はい。ありがとうございます。装備を聞かれたら、ここをオススメしておきますね。では依頼を受けにギルドへ行ってきます。」

きちんとお礼をして店を出る。


(この町にいる間は装備の補修もここでお願いしよう。)


ギルドへ向かい歩きながら考える。


(さて、初依頼か…。Eランクのスライムがあの程度だとEランクまでは何とかなりそうだな。)


ギルドの討伐依頼は原則同等ランクのモンスターが好ましい。しかしランクを2つ越えた依頼も受けられる。

その代わり達成できない場合は違約金が発生する。現在GなのでEランクまではOK、要は自己責任でやれという事だ。


考えてるうちにギルドへ着いた。中に入り依頼の掲示板を見てみる。

貼り出された依頼の紙はランク毎に分かれている。


(え〜っと、どうすっかな?

やっぱり無難にGランクを1つこなしてから上を目指すか…。)


➖ランクG➖


⚪︎常設依頼

シスナ近辺のゴブリンの駆除

3体で1カウント


⚪︎常設依頼

シスナ近辺のコボルトの駆除

2体で1カウント


⚪︎常設依頼

シスナ近辺のスライム駆除

1体で1カウント


(こうしてみるとスライムの方がゴブリン・コボルトより強いって事か。

とりあえず小金と経験値を稼ぐ意味でもこの辺りのザコを片付けるか。)


考えながらカウンターへ移動する。

「すみません、Gランクの常設依頼をお願いしたいのですが。」


「あぁ、はい。常設依頼ですね。確かに。ではカードをお願いします。ところでどの依頼にしますか?」


「えーととりあえず全部受けられますか?」

「え?まぁ期限がないので受けられますがハジメさんは初依頼ですよね?」


「はい、この街で登録する前にすでにレッドスライムを倒しているので。」

「あぁ、オーガスタが言ってた例の…。分かりました。くれぐれも無理をしないようにして下さい。では常設依頼全てカードに入力します。」


こうして依頼を全て受けてギルドを出て街の入り口まで向かう。

野営はせずに夕方までには戻る予定だ。


街を出て隣町バトラを目指す。

シスナ〜バトラ間には標高500メートル前後の小さなバトラ山があり湖の周りに沢山のモンスターがいる。

シスナから約1時間かけてバトラ山へ入る。目的地の湖は山頂付近の400メートルあたりだ。ゆっくり登ってきたが、息が切れる事もない、いよいよ湖が見えた所でモンスターもやってきた。

コボルトだ、ゴブリンより若干知能が高いので集団での行動を基本とする。1グループだいたい5匹前後だ。


あっさりと5匹全て片付ける。

分かってた事だが、Eランクのレッドスライムを倒しているのだから楽勝である。


討伐の証として右耳を切り取る。

その後もさらに2グループ倒して計15匹のコボルト討伐になった。

達成は7カウント

GからFへのランクUPは依頼達成20カウント分だ。

休憩を少し取って、湖の裏手の茂みに入ってみる。

陽の光が届きにくいのか、地面がなんだかジメジメしてる感じだ。


もう少し奥に入ろうとした時に足首に茶色がかったハンドボールくらいの大きさの何かがぶつかってきて、噛んできた。

幸いに靴は補強済みで無傷だったのでそのまま蹴り飛ばす。


この茶色のボールの正体はブラウンスライムだ。


確かFランク相当のモンスターで、グリーンとレッドスライムの中間くらいの強さのはずだ。

こいつもE~Fランク常設依頼の対象で1体1カウントだったはずだ。


後からさらにブラウンスライムは2体あらわれた。

前回のレッドスライムは勝手が分からずに、切れずに叩き潰してしまった。

今度は予備知識もあるから大丈夫だろう。

ゆっくり構えていると何やらブラウンスライムの1体が光り出して、頭の上に茶色の矢が現れた。


(もしかして…アイツ魔法使えるのか?)


そう思った矢先に矢がハジメ目がけて飛んできた。

慌てて茶色の矢を叩き落す。


(勝手にザコだと思って甘く見てたな。魔法は厄介だ。一気に飛び込んで決める!!)


ハジメは一気に加速して

ショートソードを振り抜く。

ブラウンスライムを真っ二つに切り裂いて茶色の矢も消えた。


返す刀でもう1匹も倒し危機を脱する。


(あっぶねぇ!敵も魔法使えるのかよ!しかも茶色の矢って土魔法的なヤツか?)


とりあえずこれで9カウントだな。


その後、約6時間かけて15カウントまで達成したところで日が暮れかけてきた。

(だいぶ日も落ちたし今日はここまでにして、明日でランクアップを目指そうか)


こうして山を降り朝より少し早く1時間以内にシスナの街に辿りついた。街の門をくぐりながら考える。


(まずは宿を決めるか。泊まれるなら昨日と同じ所がいいが。ギルドは一応24時間あいてるはずだし、宿決めてから精算だな。)


結局、昨日と同じ宿にお世話になる事にした。チェックインを済ませ部屋に入って横になると一気に睡魔がやってきた。

なんだかんだで疲れが溜まってるようだ。

(異世界にきて数日。知らない世界で知らない人、そして魔物だらけで。そりゃ気疲れもするか…。)

今夜はご飯は無しで寝ようかな。と考えてる内に眠りについたハジメであった。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る