第3話

「ふぁ〜よく寝た」

朝はスッキリ目覚められた。

寝起きはさすがにココ何処?と一瞬考えたがすぐに気づいた。

あっ。そうだった。異世界ね。


まだ2日目だからちょい変な感じ?なんだけども違和感ほどじゃない。


昨夜はそのままの服装で寝てしまった。

そもそも替えの服が無いのだ。

今日やる事リストに日用品の確保を追加しておかねば。

部屋を出て共用スペースに洗面台があったので洗顔を済ませて下の食堂へ。ちなみにタオルは部屋にあった貸し出しを使った。

食堂に入るとリリさんから声を掛けられる。

「おはよー。よく眠れたかい?」

「はい。よく眠れました。あ、あとタオルありがとうございます。」


「あぁ、それサービスでハジメにあげるよ。あと空いてる席に座りな。簡単にだけど朝ご飯用意するから。」


朝は柔らかいパンとスープとベーコンだった。ビジネスホテルの朝食セットみたいなものだ。これも十分美味しかった。


朝食を済ませて部屋に戻りチエックアウトの用意をする。

この世界は個人での時計なんて物はなく街で大きな鐘を朝6時から3時間感覚で鳴らして時間を伝える。


「お世話になりました。今夜も宿が無ければ泊まりに来ますね。」

そう言ってリリさんと別れギルドを目指す。

このシスナの街は3キロ四方におおよそ四角形に壁があり真ん中に時間を告げる鐘の塔があり東側に領主の館や兵士の詰め所。

西は市場

南が宿や武器屋やギルドなど冒険者街

北が住民街と奥の一部にスラム街がある。


宿からギルドへは歩いて2、3分くらいで3階建はある大きな建物だった。二本の剣に蛇が交わったマークだ。見ようによっては怪しい看板だ。

入ってすぐの所に総合案内があった。中はカウンターがあり細く部署に分かれて役所の様な作りだ。


受付の女性に声を掛ける。

「すいません、冒険者登録をしたいのですが?」


「はーい。シスナのギルドは初めてですか?」

「はい。というか登録自体が初めてなので出来れば勝手を教えて頂きたいのですが?」


「はーい。そうでしたか。では初めまして、シスナギルドの受付担当のエルザです。ちょうどこれから登録までの流れと依頼の受け方などの初回講習が有りますのでそちらを受けてもらいます。その後に禁止事項を確認してから冒険者登録となります。よろしいですね?」


講習があるなら助かるな

「はい、お願いします。」


「はい、ではこちらで仮登録をしますの仮登録と講習料とで10Gをお支払い下さい。そしてこちらに書けるところで良いので記入して下さい。」


差し出された紙に名前と種族と年齢を書いて渡す。


「えーっと、ハジメ・サカモトさん?

名字持ちだと貴族の方ですか?」


「いえ、貴族ではありませんが名字はあります。ややこしいなら名前だけの登録にしますが?」


「あ、何か事情があるようなのでそのままで結構ですよ。それではこの先の階段を上って3階正面の大きい部屋で講習となります。講習中の退席は認められません。切りのいい所でその都度休憩を入れますので。間もなく始まりますので3時間頑張って下さい。」


階段を上って部屋につきに手前の席に着く。講習を受けるのは30人前後かけっこう多いな。

中には色んな種族がいる。獣人もいれば、背の小さいドワーフ?もいるし、耳が大きいエルフ種?もいた。


講師はギルドの職員なんだろう2メートル近い巨体に相応しい筋肉で片目が怪我で潰れていた。恐らく元冒険者の口だろう。

何も分からない世界なので、講習は真面目に聞こう。


「あー、そろそろ席に着いてくれ。これから今日の初心者講習を担当する。オーガスタだ元Bランク冒険者だ。」


すると部屋から声が上がる。

「アイツが元Bランクの隻眼オーガスタか」

「去年までシスナの準エース格だった人だな。いよいよ引退したんだな。」


どうやらシスナの冒険者の中では有名な人らしい。


「あぁ、知ってるヤツも多いと思うが、先月に引退して今は後進の指導に当たる事にしてる。何か有ったら遠慮なく相談して欲しい。まずはギルドの規模とランクの説明だな…」


この世界はアレフガルドと言う名前で

ランクは世界共通らしい。

大陸が3つと大きな島が2つありそれぞれに国が沢山あるが、ギルドは各国とは独立して各地に存在する。

ギルド間はネットワークがあり情報の共有が出来ている。裏を返せば何処かのギルドで不正をすると世界中のギルドで依頼を受けられなくなるのだ。


「それじゃ、次にランクは低い所から最低のGからSランクまでの8つある。

GとFがルーキーでDで一人前って所だ。Cランクからはギルドにて昇格試験をクリアして認定となる。

そしてCランクからはギルド側からの指名依頼があり報酬が一気に大きくなる。

みんなはこのCランクを目指して頑張って欲しい。ここまでは皆んな知ってる所だけど質問あるヤツいるか?いなけゃ次に進むぞ。」

「次はDランクまでどうやったらランクアップするかだが、これは依頼を達成して信用を積み重ねていくしかない。飛び級は自分のランクより2つ上のモンスターを倒す以外には原則無い。しかし自分より2つ上のモンスターは基本的に勝てないだろうからあまり飛び級は考えるな。毎年何人も調子に乗って挑戦してほぼ失敗している。ま、例外はいるがなな。」


「はい、ちょっと質問があります。いいですか?」


「うん?えーっとハジメ・サカモトだったか?なんだ?」


「はい、現在シスナには何名くらい冒険者がいてランク分けはどうなっていますか?あと、お話を聞くと飛び級もゼロじゃないって事ですよね?」


「あぁ、ゼロじゃない。去年もルーキーの1人がEランクまで上がってきてる。そしてシスナ全体では約500人の冒険者がいる。Dランクまでが約8割だ。後はCとBランクではほぼ2割Aは数人でSはいない。もっともSランクはこのアレフガルドの世界に4人しかいない。そして毎年全体の2割がモンスターとの戦いで死んでいる。これでいいか?」


「はい、ありがとうございました。続きをお願いします。」

思ったより高ランクは少ないのと死亡率が驚異の2割か。

これはかなり厳しい世界だな。

それにSランクが世界に4人しかいないなんて四天王的な事か。


「ちょうどいい所か…。一旦休憩を取る。次は魔法の説明をして、最後に簡単な模擬訓練をしてお終いにする。」



休憩後は講師がもう1人増えた、トンガリ帽子のいかにも魔法使いタイプだ。


「えーシスナの魔法ギルド部署のマーリンです。皆さんには簡単に魔法の属性の説明をします。それでは…」


大まかに魔法は火・水・風・土が基本4属性と無属性の光・闇・空間・召喚の合わせて8つ存在する。

空間と召喚魔法はすでに失われて久しくほぼ伝承や記述の中のみの存在だ。一部アイテムボックスに空間魔法の応用が残っているがアイテムボックス自体がレアアイテムでかなり高価な物らしい。

(アイテム袋は暫く黙っていた方がいいな)


確かステータスに雷があったけど、どうやらあれは風と光の応用らしい。光の中に回復魔法が含まれているがこの回復魔法がかなり使い手がつかないようで、基本はポーションに頼るしかないようだ。

基本的には適正のある魔法属性なら魔法ショップでスクロール買って覚える事ができるらしい。シスナにも小さいが1軒だけ魔法ショップがあるみたいだ。

上級魔法は王都にある魔法学院で学ぶ必要があるらしい。


そして最後に模擬訓練となった。


3階の部屋からギルドの裏庭の訓練所に場所を移した。

「ちなみにこの中にモンスターと戦った事あるヤツいるか?」


オーガスタの問いかけに、ハジメ以外にもう1人手を挙げた。


「ほう、2人か結構多いな。

それじゃ、ハジメとゴリアテの2人で模擬戦と行くか。

武器はこちらに用意した刃を潰したモノを使ってもらう。審判は俺がやる。

ハジメはショートソードとゴリアテはアックスか。

あくまで模擬戦だからな、では初め!」



1時間後


「あーでは、各自にギルドカードを配布する。再発行にはお金がかかるから無くさないように。これがあれば身分を証明できる世界のどこにいても使えるからな。それでは立派な冒険者を目指してくれ各自解散」


職員から各自カードを受け取る

免許証と同じサイズの銀色のカードで表にはシスナギルドの証である二本の剣に蛇の模様が描かれている。

裏には個人の記録が入っている。


「さぁて登録も済んだし後は日用品の買い出しか。あ、その前に職員にスライムのアレ見てもらうか。」

(すっかり独り言が多くなってきたな。)


「おい!ちょっと待ってくれ!」

声を掛けてきたのはさっきの模擬戦の相手ゴリアテだった。


「あんた、誰かとパーティは組むのか?もし決まってないなら俺と組んでシスナで上を目指さねぇか?」


「残念ですが、暫くはソロでやってみようと思ってます。もし依頼時に共闘になった時にはお願いしますよ。では失礼」

ゴリアテに対して頭を下げハジメはギルドを出た。

(たしかに同じルーキーの中では有望株だろうけどな…。まずは一人でランクとレベル上げが優先だ。)


えーとやる事リストは…。

⑴ 日用品の買い出し

⑵ 普段着の購入

⑶ モンスターの核?の確認


⑶だけど、せっかくギルドの前にいるし聞いてみるか。もしかしたらさっきの講習の中に出てきた買い取り素材の魔石?なのかも知れないしな。


ハジメは買い取りカウンターに行く。

「すみません。素材の買い取りをお願いしたいのですが、これって買い取ってもらえますか?」

腰の革袋から赤と緑のスライムの魔石?を取り出してカウンターへ並べた。


「はいはーい。魔石ですね。まずはギルドカードを。はいハジメさん。今日登録したばかりですよね?もうモンスター退治を?」


「いえ、昨日シスナに着く前に森でスライムと戦闘済みでして。」


「そうでしたか。しかし通常のスライム3体分と、これは…。ランクEのレッドスライムの魔石じゃないですか?ランク無しでよく倒せましたね?」


「そんなに高いランクだったんですか?確かにスピードはかなりありましたけど?一撃でしたよ?」

「へ?ランク無しのルーキーがレッドスライムを一撃?本当ですか?」


「まぁ誰も見てなかったので証明が出来ませんが。」困ったな、疑われてるな。そりゃ確かに素人が倒せるランクのモンスターじゃなかったみたいだし。かと言って嘘をつく訳にもいなかいしな…。

ハジメが困っていると、後ろから助け船がきた。


「あぁ、大丈夫だ。そいつは嘘をいってねぇよ。さっき模擬戦で腕前は確認済みだ。俺が保証してやる。」


「オーガスタさんがそう言うなら大丈夫ですね。分かりました。ではレッドスライムの魔石とグリーンスライムの魔石3つで130Gですね。はい、お納め下さい。」


ハジメは職員から100Gと10Gを3枚貰った。

初報酬は意外と多かった。

(よっしゃー!初報酬ゲット!!)

それに前世の給料よりもなぜか、嬉しさが大きかった。


「オーガスタさん、ありがとうございます。フォローしてくれて。」


「いいってことよ。それにお前は嘘をついてないしな。剣の筋も良い。今年のルーキーでは頭一つ抜けてる。お前なら大丈夫だろうが、ただくれぐれも調子に乗って格上に手を出さないようにな。」


さて、順番前後したが資金も増えたし雑貨屋へ行こうか。


ギルドを出て、歩いて5分ほどして市場の中に日用品の雑貨屋を見つけた。


「ごめんくださ〜い。」

「あいよ。何をお探しだい?」


40代の男性店主がカウンター下から顔を出す。お店の中はそれほど広くは無いがなかなかキレイに整理されて見やすくなっていた。


「昨日シスナについて日用品が何も無かったので歯ブラシなどのタオルとかですね。あと石鹸もあれば。」

「歯ブラシも石鹸も王都の高級店じゃねぇと手に入んねぇぞ??」


「え?そう…なんですか??」


「おう。兄ちゃん…もしかして貴族や大きい商家のボンボンかい?」


「いえ。ただの冒険者です。さっき登録したばかりのルーキーですが。」


「だとしたらその話し方は気をつけた方が良いな。シスナは治安が良いが、悪党がゼロじゃねえ。そんな話し方だと攫われるぞ。それにしても貴族でもねぇのに、歯ブラシやら石鹸だなんて珍しいな。」

結局、それぞれ代用になるモノ

歯磨き用の乾燥させた葉と手の汚れを取る変な粉を購入した。


粉は水や親に少し混ぜて泡立てて使うようだ。葉は指に当てて歯を擦って汚れを取るらしい。

それぞれ100mlぐらいの小瓶で合わせて10Gだった。


雑貨屋を出てまた数分歩くと服屋があった。もちろんこの世界にユ●クロはない。

基本的に普段着は麻と木綿を混ぜたような素材の服が多いようだ。

もちろん高級店にはシルクのドレスなんかもあるんだろうけど。


とりあえず町人が来てるような簡単なチュニックとチノパンの様なズボンを3着そしてトランクス型の下着も、同じ3セット購入した。

服屋の買い物が合計で100Gだった。


本日の宿泊も大丈夫そうだ。

それ以外にもまだ4900G近くある。


基本生活の初期投資はこれで良いな。

やる事リストも片付けたし。

最後に武器屋で武器と防具、特に鎧を見てみるか。


また歩いて10分くらい歩くと武器屋街に入ってきた。色んなところからカーンカーンと鍛治屋のハンマーの音がする。


ギルドで勧められた初心者用のお店に入ってみる。ココはギルドと提携していて低ランク者にも買えるように価格を抑えたモノを扱ってる。もちろん通常の品質のモノもある。


「ごめん下さーい。」

「あ、はいはい。ようこそ初心者の館へ。ルーキーだね?何をお探しだい?」

店主らしき人がカウンター下から顔を出して答える。

どうやら店名がまんま『初心者の館』らしい。


「えーと、動きをあまり阻害しないである程度防御力が高いのはどんな鎧ですか?予算は500Gくらいで」


「500Gか。それだけ有ればセミオーダーで鎧が作れるさ。ちょうど軽くて程度の良いサラマンダーの革生地が手に入ったから400Gで仕立ててあげるよ。《ひよっ子ルーキー》なのにしっかり防具に金を掛けるのは気に入ったよ。近頃の若いヤツは目先の攻撃にばかりに目が行って防具を、疎かにする。」


サラマンダーの革は多少の炎耐性と撥水性があるらしい。

ついで撥水加工のマントと今のショートブーツの爪先と踵とソールの一部に薄い鉄板を加工してもらい足元の防御力アップしてバックラーの縁にもにも鉄板を貼ってもらい全部で500Gにまけてもらった。

鎧は3日後の仕上がりだ。


今回はショートソードも刃こぼれも無かったので武器はこのままだ。


これはゲームじゃない。

死んで教会からやり直しはきかない。

低ランクのうちは特に資金は武器より防具に優先に回す事にする。


こうして今夜も同じ宿に泊まって一日が終わった。

名前 ハジメ

種族・性別 ヒューマン・男

年齢 18歳

レベル 1


装備

ショートソード

パーカー

デニム

革の籠手

小さなネックレス


作製中

サラマンダーのレザーアーマー

加工済み

バックラー (鉄板強化)

ショートブーツ(鉄板強化)























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