第2話
目覚めると俺は草原の小高い丘の上にいた。空気が澄んでいて地元の北海道のようだ。都会の息苦しさは無い。
それよりココは…。
あぁ、あのやり取りは本当だったんだな。するとココが異世界か。
こっちに着いたらステータスを確認しろって言ってたな。
心で念じるか…ステータス。
名前 ハジメ
種族・性別 ヒューマン・男
年齢 18歳
レベル 1
装備
ショートソード
バックラー
パーカー
デニム
ショートブーツ
革の籠手
小さなネックレス
所持品
アイテムボックス内
5000G
下級ポーション5個
魔法適正
火・水・風・雷・回復・**・**
耐性
毒 微小
即死 微小
うん。初期装備として武器とポーションがあるのは助かった。
いくらサッカー馬鹿でも、さすがに某RPGは何となく分かる。
たぶん最初の村辺りで揃える装備を予めプレゼントしてくれたんだろう。
武器の名前やステータスも分かりやすく表示してくれてるんだろう。
あと魔法がある世界なんだな。
適正があるから、使えるって事だろう。後ろの*印は気になるが。とりあえずいい。
あとは街で魔法を買うのか戦って覚えるのかの差か。
そんな事を考えていると頭の中に直接話しかけてくる声が聞こえる。
「もしもーし聞こえます?」
「あぁ、聞こえる。神様…だな?」
「そうです。ステータスは確認出来ましたね?」
「あぁ、確認できた。それに色々と揃えてくれて助かった。裸でいきなりモンスターもシャレにならないし。」
「そのくらいはね。因みにこの世界の時間の感覚は同じ24時間で1日・それが30日で1月・そして1年は10ヶ月だから。そこだけ間違えないようにね。貨幣価値は1Gで100円くらいの換算で考えて。」
「分かった。わざわざありがとう。」
「最後にこの丘を降りて街道沿いに西に半日くらい歩くと街があるわ。」
「西だな。太陽も地球と同じ動きって事で良いのか?」
「そうゆう事。じゃ時間だわ元気でね。」
フッと頭の中での声が消えた。
さて…。とりあえず街を目指して歩くか。幸い年も若くしてくれてるしサッカーをしていたおかげで足腰は鍛えられている。
1G=100円か。物価は安い方なのか?まずは今日は街に着いたら宿探しだな。
丘を降りて街道に向かう途中の森の中でサッカーボールくらいの大きさの動く少し赤みのある半透明なナニカが居た。
柔らかそうなソイツは多分…スライムか?
特に某RPGのような青くて可愛い目や口はない。
丸みはあるが不定形でコチラを見つけると体を揺らしながら突っ込んできた!
「おい、いきなり戦闘かよ!」
ハジメがこの世界に来て初めての言葉だった。
けっこう突っ込んでくるスピード早いな!
けど…躱せない事はない。
驚きは有ったが意外にも冷静だった。
ハジメはサイドステップで横に飛び、スライムのタックルを躱し、持っていたショートソードをおもいっきりスライムに叩きつけた。
地面に叩き付けられたスライムは潰れて動かなくなり、中からピンポン玉サイズの石のようなモノが出てきた。
なんだ?スライムの核か?
街に行ったら聞いてみるか。これは一旦保管しておこうか。腰に付けてある革の袋に詰める。
袋の入り口は小さいが中は広くなってる。便利な袋だ。盾も今はこの袋に入ってる
とりあえずモンスター(スライム)を倒したな。きっと最弱ランクのモンスターだろうけど倒した事には変わりがない。
なんとかやっていけそうだな。
モンスターを倒してもゲームのようにお金は落ちてないんだな。
お金を稼ぐ方法が分かるまで出費は控えないとな、物価も分からないし。
たぶん2時間は森を歩いたか。ようやく道らしい所まで来た。
ここに来るまでにまたスライムと遭遇した。今度は緑色のスライムが3匹だったが。
さっきの赤スライム?よりも動きが遅くて簡単に3匹とも倒せた。
やはり同じようにピンポン玉サイズの石が3つ手に入った。
そういえば少し身体が軽くなった気がする。
これが街道か。
街道とはいえ、アスファルトの訳もなく街灯も勿論ない。
イメージは江戸時代の街道だな。
丘の上で見た太陽が少し傾いてきた。じゃこっちが西であってるな。
街道をひたすら西に歩く。
途中で馬車が通り過ぎようとした時、御者が少しスピードを落として声をかけてくれた。
「もう少し早く歩かんとシスナに着くまでに日が暮れるぞ。夜にはモンスターが活発になる、少し急いだ方がいいぞ。じゃ気をつけてな。」
「ありがとうございます、気をつけます。」
簡単なやり取りだったが、次に行く街の名前がシスナだという事、
何よりも会話が通じる事が分かった。これは大きい発見だ。あとは読み書きが出来れば街で最低限のコミニケーションが取れる。
剣も袋にしまい体を軽くして少し駆け足気味に街道をひたすら西に進んだ。
袋に入れると不思議と剣や盾の重さをほとんど感じなくて済む。本当に便利なアイテムだ。
なんとか日が暮れるギリギリで街に着いた。
3メートルくらいの壁に囲まれた街ここがシスナなんだろう。壁の先が夕暮れで確認出来ないがある程度大きさはありそうだ。
入り口には壁と同じ高さの石の重そうな扉があり警備の兵士らしき2人が立ってる。門番か。
ますますファンタジーな世界観だ。
「すみません。初めてこの街に来ましたが街に入るのに何か必要ですか?」
こうゆうのは初動が大事だ。出来るだけ低姿勢で兵士に尋ねる。
「アリアの村からきたのか?身なりは冒険者だが、それにしてはやけに綺麗な言葉遣いだな。冒険者ならギルドカードがあればそのままお金はかから無いが?」
「いえ、冒険者では無いので、カードはありません。通行料はいくらですか?」
「うん?そうか。では通行料を5G納めて欲しい。そしてこの札があれば5年間は通行料を免除出来る。札は50Gだがどうする?」
5年パスが50Gつまり5000円か。
「50G納めます。」
「では、こちらを無くさずに。再発行にはまたお金がかかるから気をつけてな。ようこそシスナの街へ」
扉が開いて、街に入る。
街はとても賑わっていた。
ヨーロッパの旧市街地のような石畳みの道にレンガの様な資材で家や店ができている。
歩いている人も様々だ。
普通に人もいるし、耳や尻尾が生えてる人?もいるおそらく獣人なんだろう。
そのまま少し大きな通りを歩いているとベッドと料理が描かれた看板の大きな建物が見えた。
きっと宿だ!
さっそく中に入ってみる。
中は1階はロビー兼食堂の様な感じだろうか。テーブルは客で一杯だった。
入り口で立ってると恰幅のいい女性が声をかけてきた。女将さんだろうか?
「お客さん!1人かい?こっちのカウンターで良かったら座れるよ!」
「はい、1人です。じゃお願いします。」
「あいよ!リリ!お客さん1人案内して〜奥のカウンターだよ。」
リリと呼ばれて向かってきたのは、自分と同い年くらいの大きな犬耳が特徴の女の子だった。
「はい、いらっしゃいこっちだよ。」
「あぁ、ありがとうございます。」
「なんだい?随分丁寧な口調だね。この街は初めてかい?とりあえず何飲む?」
「あーとりあえず生中で。」
「なんだい?生中って?うちはエールがワインしかないけど?」
「すみません、じゃワインを」
「あいよ。とりあえず飲み物来るまでにメニュー見ててよ。すぐ持ってくるから」
あぁ失敗した。つい居酒屋感覚で生中って言ったな。サラリーマンの性か。
あとはメニューが読めるか、どれどれ…。
1番人気がファングボアのステーキで15Gか安いな。手持ちは5000Gか。やっぱりこの世界の物価は相当安いと見ていいか?
いや、この街が安いだけかも知れないか。
ワインは何段階かあるのか一杯5G〜20Gか。
うん。メニューの字も普通に日本語で読めるな。さすが異世界。
「あいよ、ワインね。料理は決まったかい?」
「えーとこの1番人気のステーキとあとはリリさんのオススメのモノをもう一品お願いします。そしてこの上は宿ですか?まだ宿が決まってなくて。」
「ステーキとオススメね。あぁウチは宿屋兼食堂だからね。たしか部屋は空いてたはず…。一泊50Gでここら辺だと少し高めだけど良いのかい?まずはご飯食べてる間に考えなよ。一部屋分は取っておくから」
料理が来るまでにワインを飲む。
少し苦味があるが飲めない事はない。
となりの席の髭もじゃのおじさんも1人のようだから話しかけてみる。
「あのーすみません。ちょっと良いですか?」
「なんじゃい?」
「一杯奢りますから話を聞かせて欲しくて。」
「おぉ奢りか!それなら話を聞くぞ!何が聞きたい?」
おじさんのグラスが空だったので、リリさんにおかわりをお願いした。
「えーとついさっきこの街に着いて、何も分からないのでオススメの宿やらレストランやら聞きたくて。」
「それなら簡単だ、ココが1番だ。」
その時
「あいよ、エールのおかわりとファングボアステーキだよ。オススメは少し待っててな。」
エールは上に泡が乗ったアレだった。しかも1杯5Gの安さ
次からはエールを頼もう。
「まずは食べてみろよ、ここのはソースが他と違う。オヤジがこだわったモノを先代から使っててな。息子に代替わりしてもしっかり守ってさらに美味しくしてる。」
たしかにこのソース市販のステーキソースよりずっと美味いし、ボアって猪?だよな?こんなにも柔らかくなるんだな。
「お、若いのに味が分かるみたいだな。言葉遣いは妙に丁寧だし、どこかの貴族様のお忍びか?」
「いやいや、ただの旅の冒険者ですよ。」
「そうか?まぁ詳しくは聞かんよ。宿も部屋も掃除が行き届いてる。金に余裕があるならシスナで泊まるならココがオススメだ。」そう言ってエールを一気飲みしておじさんは席を立った。
「ご馳走さん」
今夜はココに泊まろう。しばらくここを拠点にするなら連泊も考えるか。
「はいよ、お待たせ本日のオススメ川魚の塩焼きだよ。これがラスト一品だったよ。ツイてるね。お兄さん。じゃゆっくりね。」
「あ、リリさん。やっぱり今夜一泊お願い出来ますか?先払いなら今渡しますし。」
「あら?ありがとう。じゃ今宿帳を持ってくるから…お金はとりあえず50Gと確かに頂きますね。」
川魚は日本で言う鮎の様な感じか。
塩焼きでとっても美味い。岩塩なのか?本当に料理人がこだわってるのが分かる。
幸いまだお金はかなりあるし、当たりだったな。
食事後にそのままカウンターでチェックインを済ませ二階の部屋に通された。
8畳くらいに机と椅子そしてベッドとシンプルな部屋だがきちんと掃除も行き届いているしシーツも清潔そうだ。
「朝食は下の食堂で食べてね。外出時は鍵を持って行っても良いけど無くしたら50G掛かるから。フロントに預けた方が確実よ。ではごゆっくり〜。」
そう言って
リリが下の食堂に戻っていった。
はぁー今日は疲れたなぁ。
とりあえず無事街に来れたし宿も確保できた。初日として上々だな。
あとはギルドで冒険者登録?だったか?
それを済ませて、生計を立てる準備だな。
まずは今夜はゆっくり寝よう。
ベッドに横になるとハジメはあっという間に寝落ちした。
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