#6 【横行する密猟。竜素材ビジネスの裏に黒幕が?】(2019年15号)[1/2]
現代、竜(ドラゴン)は、『ライブゴールド(生きたお金)』と呼ばれるほど素材の価値が高く、大きな闇のビジネスとなっている。
その黒幕には、あの大国の存在があるとのうわさだ。
〇
アフリカ・カメルーンの、とある異能界管理地区。
銃や異能具など、各々武器を持った数人の男たちが静かに森の奥地へと入ってゆく。
「……いたぞ、いたいた」
一人の声に皆が息を殺し、獲物に気付かれぬよう、静かに近づく。
――そして、銃声。
その一発を皮切りに、一斉に何十発もの銃弾、火球、氷柱、紫電、カマイタチなどを急所に集中させ倒したのは、巨大なドラゴン。
こうして仕留めたドラゴンの肉が、この村では人々の食料になっているのだ。
村人の一人は言った。
「食うためにドラゴンを殺して、何が悪い! 俺たちは昔からこうやって、家族を食わしてきたんだ」
しかし、この村のように食料目的で殺されるドラゴンは、ほんの一握り。
深刻なのは、牙や爪、皮に骨など、竜の素材を狙った密猟が、アフリカ全土で多発していることだ。
野生異能系動物保護活動家カルロス・アーマインはこう言う。
「実はこうした密猟の裏で暗躍しているのが、〝例の大国〟の存在なんです」
今回我々は〝例の大国〟が陰で糸を引く密猟と、竜素材取引の裏側に潜入。
その闇ビジネスの深層に迫った。
〇
約30年前(1987年)に70万頭いたアフリカ・リザードドラゴンは、その命を密猟者に狙われ続け、今や40万頭近くにまで激減している。(国際異能系自然保護連盟調べ)
カルロス・アーマインは言う。
「アフリカ・リザードの数が少なった事で、ここ数年、竜素材の価値が急激に上がっているんです」
2008年、1kgあたり2530ドル(約30万円)以下だった竜素材の取引価格が、たった6年(2014年)で、10倍以上の3万ドル(約330万円)にまで跳ね上がっている。
そのため、アフリカの各地で金目当ての密猟が横行していた。
シュービル国立公園管理者ブライアン・アンチェスは憤慨しながらこう教えてくれた。
「ある犯罪組織は、竜素材の取引だけで月に200万ドル(約2億2000万円)の収益を得ているようです」
また、元密猟者ステイタットの話では、大金を手に入れるため、残酷な方法でドラゴンを殺す者も……。
「手っ取り早く仕留めるため、水飲み場に猛毒を流して、牙や爪が成長しきってない子ドラゴンなんかもまとめて狩るのさ」
〇
ケニアにある『クィーブ国立異能系動物公園』も、密猟が多発している地域の一つだ。
森に降り立つドラゴンを捕獲するため木の間に貼られた『網』。
地を這う事の多いアフリカ・リザードには『トラバサミ』も有効だ。
その他、最新の異能具を用いたものまで、密猟者の様々な罠によって、ドラゴンは殺され続けている。
そんな園内に、銃を装備した男たちが整列している。
彼らは園の警備隊だ。その中には、元密猟者の男もいる。
警備隊員(元密猟者)ロッカス・ロッカルもその一人。
彼は良心の呵責に苛まれ、密猟から足を洗い、ドラゴンを守る側の警備隊に入隊した。
「密猟をしていた頃、私は200頭以上のドラゴンを殺しました。金のためとはいえ、申し訳なく思っています」
ちょうど取材をしていた日、園内に密猟者が侵入したとの通報が警備隊に入った。
特別な許可を得て、警備隊の取り締まりに、我々は密着した。
だが、密猟者にいつ命を狙われるかわからない。
実は、アフリカ全土で、過去10年の間に、なんと1000人以上もの警備隊員が密猟者によって殺されているのだ。
サバンナを歩いていると隊員の一人が何かを見付けた。
「これを見ろ。足跡だ」
「まだ新しいな」
「ああ。密猟者が近くにいる」
隊員は覚悟している静かな声で頷く。
隊全体に緊張が走る。
「どこだ……」
「……こっちに来てくれ。何が物音がするぞ」
銃を構えながら、慎重に密猟者の痕跡を辿る。
そして、しばらく歩いた時だった。
先頭を進む隊員が、後方に小声で叫んだ。
「身を隠せ!」
全員、一斉に伏せ藪や小木に隠れる。
すると――。
3人の男が数メートル先を横切ろうとしていた。
皆Tシャツに短パンという日常的でラフな格好に見える。
しかし手には、大きな白い袋と、棒状の何かを持っている。
突然、隊員の一人が威嚇射撃をした。
3人の不審者は思わず身を伏せる。
隊員たちは男たちにすぐさま詰め寄り、身柄を拘束した。
すると、持っていた棒状の物は、武器に使用するヤリだった。
さらに、袋の中からは数本のとドラゴンの爪・牙が出てくる。
隊員たちはそれらを押収。3人の密猟者を逮捕した。
密猟者の一人がこう漏らした。
「普通に働くより、竜素材の方が金になるんだ。俺達にはこれしかねえのさ……」
命懸けでドラゴンの密猟者を捕まえる警備隊。
だが――。
異能界国立公園局事務総長フェイ・ブラックは、我々取材陣にこう嘆く。
「私達が命懸けで密猟者を捕まえても、奴らは、何故かすぐに釈放されてしまうんです」
一体なぜ――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます