使いこなす、本能
「お前が望もうが望むまいが、戦いの火蓋は切られているのだ」
口論の末に息切れしたタエとタタを、機械の身体で浮遊しながらたしなめるのはメゾンだった。
彼はこのアジトを対メストス戦の重要な拠点にするべく十数年にもわたり組織作りを主導してきたのだ。彼にとってはタエという人物は前々から知っており組織に引き抜くことは既定であった。最後のピース一つの反抗程度で、長年の計画を諦めるなどという考えは持ち合わせていない。
「さあ、出発だ。私たちの
「けっ」
タエはメゾンの芝居がかった口ぶりが気に入らず、タタは無感情ながらタエのことが憎らしい。この三人のメンバーが作戦攻撃の中枢を担うというのだから驚きである。既に不和の雰囲気しかない。
「タエ……貴様にメゾンの言葉を拒む権限はない。我らの悲願のため、協力してもらおうか――って聞いているのか?!」
タタの激怒は、タエには届いていない。メゾンが右腕を高々と上げたのを合図に、彼らのいる円柱状の建物の上部が音もなく開く。空――久々に直に見た空は、タエの本能をくすぐった。
「戦いたい……」
その空は、戦地に通じている。
駒となり死地に向かわされる民族の運命を呪いながら、自身は戦いの呪縛から逃れられない。それは矛盾ではあったが、魂から血に濡れそぼってしまったタエには血と涙の区別もつかぬのだろう。
同族を殺す戦場しか、彼の居場所はなかったのだ。それは現実だった。
「お……?! なんだ、以外と乗り気じゃないですか」
タエには気づかないことだったが、タエの金属質の肉体は形を変えていた。タエはタエが乗っていた戦闘機そのものになっていく。やがてタエの意思が肉体と離脱し操縦席に
『――おい。四方を囲まれてどうやって離陸する』
わずかながら怒りを含んだその声は、金属の向こうからメゾン、タタの両人に届く。
「は、そんなのも知らなかったのか? あの発着システムに近づいてみろ、自動音声が教えてくれる」
『発着システム……あのヘンテコなモニュメントは滑走路だったのか』
「ヘンテコって言うな! あれのデザイン考えたの僕なんだからな! ……って聞けよオメェ!」
オメェ呼ばわりされたこともタエは知らないのだろう。こうなった彼には、戦闘に必要な情報しか入らない。
『……面倒だ』
「は……っておい、そのまま地上から離陸するつもりかよ?! 滑走なんてしてたら僕らの家がぶっ壊れちまうだろう!」
タタの絶叫を、タエの機体のモーター音がかき消す。タエは地面を蹴るような感覚で、垂直に飛び上がった。
「……な、なんだあれ…………」
呆然とするタタを横目に、メゾンはやや誇らしげだった。
「身体慣らせの段階で第二形態まで獲得し、使いこなすとは。さすが私が見込んだだけはある」
タエの肉体は巨大な古代生物――恐竜のように、変形、そして飛翔した!
「私たちも〝トランスフォーム〟しよう。早くしないと置いていかれてしまう」
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