第5話 現実

あぁ、きっと俺は知らないうちに理想を押し付けていたんだろう。


あの頃見た笑顔、聞いた言葉、触れた感覚。綺麗な思い出の中の君を、俺は今の君に押し付けてたんだ。


現実の君はもう、俺のことは見てなくて、考えてなくて、心にないのだろう。


だから、きっとまだ可能性があると思う俺は現実の見えてない馬鹿なんだな。今を生きていない自分の中の時間は、君といたあの頃の時のままだ。


ようやくそれがわかった。やっと現実の君を知った。今までのはただの理想の押し付け。ほんと迷惑だっただろう。


今を生きる為、未来を見るために、もう終わりにしよう。あの心地良かった時間は帰ってこない。なら……もう忘れよう。


自分の中の時計が静かに動き出す。


「夢はもういい」

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