第4話 未熟な恋

“裏切られた”


当時はそう思っていた。

でも、それは逆恨みというものだ。君が私のもとを離れたのは、この恋自体が未熟なものだったからだ。


貴方に好きな人がいたとしよう。

その人とどうしても付き合いたかった。そして勇気を出して告白して……その恋は実った。そんな世界があったとしよう。


付き合い始めの頃は皆浮かれる。新しい恋にドキドキする。この人と一生、一緒に歩んでいきたいと思うだろう。


だが、ある日突然その幸せが消えたとしたら?何も言わずに、貴方の前を離れたとしたら?

貴方は悲しみにくれ、「なんで」と訴えかけるだろう。そしていつか、恨んでしまうだろう。


確かに、残された人の気持ちを考えない奴は悪だ。自分勝手で、面倒くさがりで、惚れられた方の責任を果たそうともしない。


せめて、何か言って欲しかった。

目を見て話して欲しかった。

ちゃんと……ふって欲しかった。


そう、心の中で何度も何度も嘆くだろう。



でも、それこそ自分勝手な思いだったのだろう。

人は誰しも、告白されたら嬉しいものだ。舞い上がってしまう。たとえ、それが”好きじゃない”相手だったとしても。


相手はまだこの恋において未熟だった。自分を好きになれていなかった。そんな状態の相手を、告白という薬を使って自分に縛り付けることが果たして幸せな恋と言えるのだろうか?


その人が離れたのは、自分のせい。その薬の効果が切れたからだ。

本当だったら、薬なんていらない。お互いがお互いを好きだったら、そんなものは最初から要らないんだ。


だから、君が私のもとを離れたのは私のせい。あの時の君を、告白で縛ってしまった私のせいだ。


それなのに、君が離れたことを”裏切り”というのは違うだろう。


君は悪くない。


全ては私が招いた、未熟な恋だったのだから。

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