第3話 狼の話・1
とある村のそばの森。そこには一人ぼっちの寂しがり屋な狼がいました。
狐や兎と友達になろうとしても怖がられてしまうので、いつしか狼は誰かと友達になることを諦めてしまいました。
一人寂しく森を歩いていたある日のこと、狼は小鳥達の噂話を聞きます。
「近くの村に赤ずきんという女の子がいるそうよ。動物みんなに優しい可愛い女の子。」
「なんにも怖いものがなくてみんなと仲良くできる強い子らしいわ。一目見に行ってみようかしら。」
「いいわね!そうしましょう!」
小鳥達はそれだけ言うとどこかへ飛び去って行きました。
「怖いものがないのか。それなら僕とも友達になってくれるかな。怖がらずに仲良くしてくれるかな」
狼はそう考えました。ついに僕にも友達ができるかもしれないという期待を胸に狼は赤ずきんを一目見ようと村に行きました。
人間は狼を嫌います。狼は何も悪いことをしていないし、しようとも思っていなかったのに猟師は狼を殺そうとしました。そんなことがあってから、狼は人に近づこうとしません。でも、今日だけは、遠くからでもいいから赤ずきんを見てみたいという誘惑に負けて村に近づいていきました。
ちょうどそのとき、とある家の戸が開きました。そこから赤い頭巾を被った小さな女の子が出てきました。
「赤ずきん、今日は何処に行くの?」
「森のお友達と遊ぶのよ!日が沈む前に帰ってくるわ!」
木でできたカゴいっぱいに果物と木の実を入れて、女の子は走っていきます。
「あの子が赤ずきん......可愛い元気な女の子だな」
狼は赤ずきんについていきます。自分の住む森の中に入っていく赤ずきんの後をこっそりと追いかけます。
「兎さん、狐さん、小鳥さん!今日も一緒に遊びましょう!たくさん木の実を持ってきたの。一緒に食べましょう?」
赤ずきんは大声で叫びます。
すると辺りからたくさんの動物達がでてきました。
「わーい、赤ずきんだ!遊ぼ、遊ぼ?」
元気に赤ずきんのまわりを走り回ります。
「もちろん!今日はたくさん遊びましょう!」
赤ずきんは動物達と仲良く話しながら鬼ごっこやかくれんぼをしたり、疲れたら一緒に木の実を食べたりと、とても楽しそうです。
「いいな、僕も遊びたいな」
狼は思いました。でも、僕が行ったらみんなは逃げてしまう。狼は寂しそうにその場から立ち去りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます