赤ずきんの章

第2話 赤ずきんの話

 とある村にたいそう美しい娘がおりました。その娘は赤ずきんと呼ばれ村のみんなに愛されていました。


 ある日、おかあさんが赤ずきんに言いました。

「おいで、赤ずきん、ここにケーキが一つとワインが一本あるわ。おばあさんのところへ持って行ってちょうだい。おばあさんは病気で弱っているの。暑くならないうちにでかけなさい。行くときは道をそれないようにね。そうしないと転んでビンを割って、おばあさんは何ももらえなくなるからね。部屋に入ったら、お早うございます、と言うのを忘れちゃだめよ。」

「よく気をつけるわ。」

 と赤ずきんはお母さんに言って、約束の握手をしました。


 おばあさんは村から離れた森に住んでいました。赤ずきんが森に入ったちょうどそのとき、赤ずきんは狼に出会いました。赤頭巾は狼が悪いけものだと知らなくて、まったくこわがりませんでした。狼は言いました。

「こんにちは、赤頭巾ちゃん。こんなに早くどこへ行くんだい?」

「おばあさんのところよ。」

「エプロンには何が入ってるの?」

「ケーキとワインよ。昨日、焼いたの。病気のおばあさんにおいしいものを食べてもらって元気になってもらうのよ。」

「赤ずきんちゃん、おばあさんはどこに住んでいるの?」

「この道を真っ直ぐ歩いたところよ。おばあさんのお家は3本の大きな樫の木の下にあるの。はしばみの木がすぐ下にあるから、きっとわかるわ。」

 と赤ずきんは答えました。


 狼は、

「なんて柔らかそうで若いんだ。ばあさんよりうまそうだ。おれはうまくやって両方つかまえなくちゃならん。」

 と心の中で考えました。それで狼はしばらく赤頭巾のそばを歩いて、それから言いました。

「赤ずきんちゃん、見てごらん、このあたりの花はなんてきれいなんだろうね。周りを見回してごらん。小鳥たちもとてもきれいにさえずっているのに君はきいてないみたいじゃないか。森の中は何でも楽しいのに。」


 赤ずきんは顔をあげました。太陽の光が木の間からあちこちにおどっていて、きれいな花が一面に生えているのを見ると、赤ずきんは、

「おばあさんに摘んだばかりの花束を持って行けば、それも喜んでくれるわ。まだ早いから大丈夫よね。」

 と考えました。それで花をさがしに道から森の中へ走って行きました。一本摘むと、もっと向こうにもっときれいな花を花があるように見えてそのあとを追いかけ、だんだん森の奥へ入って行きました。


 その間に狼はまっすぐおばあさんの家へ走って行き、戸をたたきました。

「そこにいるのは誰?」

「赤ずきんよ」

 と狼は答えました。

「ケーキとワインをもってきてるの。戸を開けて。」

「私は起き上がれないから、自分で戸を開けて頂戴」

 おばあさんは言いました。狼は戸を開けるも一言も言わないでまっすぐおばあさんのベッドに行きました。そして一口でおばあさんを食べてしまいました。それから狼はおばあさんの服を着て、帽子をかぶり、ベッドに寝てカーテンをひきました。


 そのころ、赤ずきんは花を摘んで走り回っていました。たくさん集めてもう持てなくなるとやっとおばあさんのことを思い出し、道を進みました。赤ずきんは家の戸が開いたままになっているのに驚き、部屋に入ると、とても変な気分になったので、「まあ、今日はとても不安な気持ちだわ。いつもだとおばあさんといるのがすきなのに。」と思いました。

「お早うございます。」

 と叫びましたが返事がありませんでした。それで赤ずきんはベッドに行き、カーテンを開けました。そこに顔まで深々と帽子をかぶったおばあさんがいて、とても奇妙に見えました。


「まあ、おばあさん、とても耳が大きいわ。」

 赤頭巾は言います。

「お前の声がよく聞こえるようにだよ。」

 と返事が。

「だけど、おばあさん、とても目が大きいわ。」

 赤ずきんは言います。

「お前がよく見えるようにだよ。」

「だけど、おばあさん、とても手が大きいわ。」

「お前をよく抱けるようにだよ。」

「だけど、おばあさん、おそろしく大きな口よ。」

「お前をよく食えるようにだよ。」

 狼はこう言うか言わないうちに一跳びでベッドから出ると赤頭巾を飲み込んでしまいました。


 狼は食べ終わると、またベッドに寝て、眠りこみ、とても大きないびきをかき始めました。猟師がちょうど家をとおりがかり、「おばあさんはなんといういびきをかいているんだ。大丈夫かちょっと見てみなくては。」と思いました。


 それで猟師は部屋に入り、ベッドに来てみると狼が寝ているのが見えました。

「お前をここで見つけるとは。この罰当りめ。」

 と猟師は言いました。

「お前をずいぶん探したぞ。」

 それから狼を狙って撃とうとしたとき、「狼はおばあさんを飲み込んだかもしれない、ひょっとしてまだ助かるかもしれないな。」という気がしてきました。それで撃つのをやめ鋏をもってきて眠っている狼の腹を切り開き始めました。チョキチョキと2回切ると、赤い頭巾が輝いているのが見え、またチョキチョキ2回切りました。すると小さな女の子が飛び出て、

「ああ、とても怖かったわ。狼のお腹の中の暗かったこと!」

 と叫びました。そのあと、年とったおばあさんも生きて出てきましたが、息も絶え絶えでした。ところで、赤ずきんは急いで大きな石をとってきて、狼のお腹に詰めました。狼は目が覚めると逃げようとしましたが、石が重すぎてすぐにくず折れ死んで倒れました。


 それで三人は喜びました。猟師は狼の皮をはぎ、家に持ち帰りました。おばあさんは赤頭巾がもってきたケーキを食べ、ワインを飲みましたとさ。

 めでたしめでたし。


だが、これは全て嘘のお話。決められたシナリオ通りに彼等が演じた結果。

今から本当のお話をしよう。

嘘のような本当のお話を......

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