ハッピーエンドじゃ終われない

第1話 この世界は．．．．．．

　この世界は物語の世界。

　昔から語られる童話の世界。

　作者の作った流れ（シナリオ）からは逃げられない。

　どう足掻こうと結末（エンディング）は変わらないんだ。

　登場人物達が何を思っているか、本当にシナリオ通りなのか。そんなことは誰にもわからない。

　ただ一つ分かるのは彼らは物語の中で生きているということ。だけど結末（エンディング）は変わらない。だから、本当の自分の気持ちを押し殺して自分の決められた役を演じている。

　悪役はこんなことをしたくないと思いながら決められた流れ（シナリオ）にそって決められた台詞（セリフ）を言う。

　とある悪役は人を傷つけたくないと願い、またとある悪役は主人公の幸せを願う。

　だけど、主人公が幸せになるには自分が犠牲にならなきゃいけない。そんな思いを抱えて今日も彼らは演じている。

　本が開かれ誰かが読み始めると童話の世界はまた同じことを繰り返す。『人魚姫』なら王子と人魚姫が結ばれない結末を。『シンデレラ』なら王子と結婚して幸せになる結末を。

　誰かが読むことでどんなハッピーエンドもバッドエンドも何度だって繰り返されるのだ。

　そしてそんな苦しい悲しい童話の世界に一人の魔女が現れた。悲しい結末を迎えた登場人物達に一度だけチャンスを与える優しい魔女が。

　そして魔女は決まってこう言います。

「お前らが望む物語（シナリオ）に書き換えてしまえばいい。いつだって主役はお前自身だよ。一度さ。一度だけやり直させてやる。幾度となく繰り返される同じ運命の中で抗おうするのなら私は手を差し伸べてやろう。」

　と．．．．．．