第54話



「ここか……」


「なんかお屋敷みたいだな」


 俺とユートは森の奥の方まで来ていた。

 森の奥には、お屋敷があり、なんだか不気味な感じだった。

 この中に彩は居るのだろうか?


「とりあえず中に入ってみようか」


「あ、あぁ……」


 俺たちは息を殺し、静かに屋敷の中に入る。


「四人……いや五人だな……気配を感じる」


 玄関ホールに入り、壁沿いを歩きながらユートはそんな事を呟く。

 彩とレイミー以外にも後三人居るということか……。

「妙だな……」


「何が妙なんだ?」


「人数が少なすぎる……もっと警備に人が居ても良いと思ったが……」


「そうなのか?」


 俺は敵が四人も居るだけで怖いけどな……だって、普通に考えて俺たちの倍の兵力だよ?

 まぁ、兵力って良いのか分からないけど……。


「奥に行こう……彩ちゃんが居るかもしれない」


「あぁ……」


 俺たちは静かに奥に進んで行く。

 屋敷の中は異様な静けさだった。

 細心の注意を払いながら、俺たちは一個一個部屋のドアを開けて彩を探して行く。


「居ないな……」


「そうだね、もう少し奥かもしれない」


「そうだな、早く行こう」


 奥に行くにつれて物騒な物が増えていった。

 剣に槍、斧に鉈など色々な種類の武器が保管してある部屋に、変な液体が多く保管された部屋など、様々な部屋があった。


「なんだこの部屋?」


「書庫のようだけど……並んであるのは魔術書だね」


「魔法書?」


 次に来た部屋は壁一面が本に囲まれた部屋だった。 中は薄暗く、この部屋が一番不気味だった。


「あぁ、その名の通り魔法を封じ込めた書物だよ。読んだだけで魔法を取得出来たり、呪いをかけ方を記したものもあるらしいよ」


「へぇ……そうなのか」


 俺はそんな事を呟きながら、近くにあった一冊を手に取ってページを開く。


「あ! 下手に触っちゃダメだよ!!」


「え……うわっ!!」


 ページをめくった瞬間、急に本が光出した。

 

「ま、まぶし!!」


「は、早くページを閉じて!!」


「くっ!」


 俺は言われた通り、魔法書のページを閉じる。

 ページを閉じた瞬間、本から出ていた光は消えた。


「な、なんだったんだ?」


「あんまり軽率な事をしないでくれ! バレたら大変だ!」


「わ、悪い……気になって」


「まったくもう……」


 確かに今のは俺が悪いな……ここは既に敵地、見つかって囲まれたら大変だ。


「ここにも彩は居そうにないな……」


「そうだね、次に行こ……ん?」


 ユートは急に言葉を止め、一冊の本に視線を向けていた。


「どうした?」


「これって……もしかして!!」


「あ、馬鹿!!」


「え?」


 ユートは急に一冊の本に飛びついた。

 しかし、ユートが本を少し動かした瞬間、本が大きな音を出し始めた。


「ば、馬鹿!! 何やってんだ!」


「す、すまない……えっと……どうやったら直るのかな?」


「俺が知るか! 人に偉そうな事言っておいて自分はそれか!!」


 音はどんどん大きくなっていく。

 このままでは俺たちの存在がバレてしまう。


「もう燃やしちまえ!!」


「ダメだ! この本は持って帰る!」


「アホな事言ってんじゃねー!! ガキか!!」


「違うんだ! この本は……」


「そこで何をしている!」


 ユートがそう言いかけた瞬間、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

 槍を持った全身緑色の魔物……俺の予想だと……多分ゴブリンだろうな……。


「クソ! 見つかったか!」


「お前がアホなことしてるからだろ!」


「君も同じような事しらだろ!」


「注意した奴が同じ失敗してんじゃねーよ!!」


 俺たちが口喧嘩をしていると、槍を持ったゴブリンは、持っていた槍をこちらに向かって投げつけてきた。

「貴様! まさか、英雄……ユート・ディリアスか!!」


「え? 誰?」


「あぁ、僕の本名」


「あぁ、そういうこと……なんか良い難いな……」


「今はそんな事どうでもいいだろ!」



 

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