第49話

「い、いきなり何を……」


「良いから言いなさいよ」


「なんでそんな高圧的なんだよ……」


 こいつはもっと可愛らしく質問出来ないのか……。 なんで眉間にシワが寄ってんだよ。

 質問に対して顔が怖いんだよ。


「あぁ……そうだな……若干怖いかな……」


「ま・じ・め・に!」


「……はい」


 本当に今は恐怖を感じてるんだが……。

 俺はそんな事を思いながら、彩から顔を反らし考える。

 うーむ……普通に好きだと言えれば良いのだが……ここでそれを言ってしまったら言わされたみたいだし……それになんか負けた気がするし……あいつの勝ち誇った顔とかみたくねーなぁ……。


「あぁ……努力家だと思うぞ……」


「そうじゃなくて! なんか……もっとあるでしょ!」


「もっとって言われてもなぁ……」


 完璧に言わせに来てるな……そんなに言わせたいなら、もう自分から言えよ。

 はぁ……まぁ、こいつの性格上仕方ないか……素直じゃ無いし。


「なんでそんな事聞くんだよ……」


「そ、それは………聞きたいからよ」


 ん? なんだ? 今日はいつもより素直なような……。


「で! どうなのよ!!」


「ど、どうって言われても……」


 彩は俺の顔を見ながらそう尋ねてくる。

 ここで好きと言ってしまうべきなのだろうか?

 いや……だが……うーむ……。

 俺が悩んでいると、急に部屋の窓から大きな音が響いた。


「え?」


「な、なんだ!?」


 窓の方を見ると、窓が割られていた。

 何かが部屋の中に投げ込まれたのか、部屋の中には窓の破片が散らばっていた。

 そして窓の外から誰かが部屋に入ってきた。


「やっぱり……見つけたわ!」


「お、お前はレイミー」


 窓の外から現れたのはレイミーだった。

 

「何しに来た! なんでお前がここに!!」


「本当はこんな事したく無かったけど……はっ!」


「うっ!! な、なんだ……体が……動かな……」


「悪いけど貴方は少し大人しくしててね」


 レイミーが手をかざした瞬間、俺は体の自由が効かなくなった。

 レイミーはそんな俺を放って、アーネの方に近づく。

「欲しいのは貴方なの」


「な、何よあんた……」


「彩!!」


 レイミーは彩に近づき、またしても手をかざす。

 すると彩は気を失い、その場に倒れた。

 レイミーは彩を抱きかかえ、そのまま割れた窓から外に出る。


「待て!!」


「ごめんなさい……待てないわ」


 レイミーはそう言うと、彩を連れて窓の外に出て行ってしまった。

 俺はその様子をただ見ているしか出来なかった。


「彩ぁぁぁ!!」


 体がいまだに動かない。

 レイミーは一体何が目的で彩を連れ去ったんだ……だが、今はそんなのどうでも良い!

 今は早くレイミーを追わないと!!


「くっそ……なんで動けないんだ!!」


 俺はなんとか体を動かそうと手足に力を入れる、しかし体はまったく動かない。


「ユート、彩! どうかしましたか!!」


「アーネ!!」


 騒ぎを聞きつけたのか、アーネが慌てて部屋に入ってきた。

 俺はアーネに何があったかを説明する。


「なんですって! 彩が連れさらわれたですって!?」


「あぁ、早くあいつを追わないと!」


「そうね……ともかくユートに連絡を!」


「あぁ………だがその前に……これ、なんとかしてくれない?」


「え? あぁ……魔法ね……なんで動かないのかと思ったけど、趣味じゃないのね」


「こんな趣味があってたまるか! 早く動けるようにしてくれ!!」


 俺はアーネに掛けられた魔法を解いてもらった。


「くそっ!! なんで彩を!」


「悠人君落ち着いて! さっきユートに連絡したから!」


「これが落ち着いて居られるか! 彩が……俺が居たってのに!!」


 くそっ!! 何も出来なかった……俺が居たのに……。

 俺は悔しさを噛みしめながら、自分の拳を堅く握る。

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