第48話

 アーネと彩も食事を始め、俺たちはユートを抜いた全員で朝食を食べていた。

 アーネはユートが心配では無いのだろうか?

 あれだけラブラブなのだ、ユートが戦地に赴くとなれば、もっと心配してても良さそうだが……なんだかいつも通りだ。

 俺がそんな事を思っていると、俺の変わりに彩がアーネに尋ねた。


「ねぇ、アンタ、旦那の事は心配じゃないの?」


「心配? 心配なんてしてないわ」


「そうなの? 旦那が戦地に行ってるって言うのに、随分冷たいのね」


「違うわよ……私は信じてるから……ユートが今回も無事で帰って来る事を……」


 そう言うアーネの表情は穏やかだった。

 本当にユートの事を信じているのだろう。

 この二人の信頼関係はかなり厚いんだろうな。





 食事を済ませ、俺と彩はアーネに早く元の世界に戻して欲しいと話しに行く。


「え? 早く元の世界に戻してほしい?」


「あぁ、早く頼む」


「そうよ、こっちは折角の休みなんだから!」


「まぁまぁ、もう少しゆっくりして行ったら?」


「そんなゆっくりもしてられねーよ、早く帰してくれ」


「私も明日は仕事なんだから、早く帰してよ」


 俺と彩はアーネに早く元の世界に帰して欲しいと訴える。

 しかし、一向にアーネは俺達を元の世界に帰そうとしない。


「実はね……私の魔力がそこまで回復してないのよ、だから今すぐ帰すのは難しいの」


「魔力が無いと帰れないの?」


「そうよ彩、世界を渡るにはそれなりに大きな魔力が必要なの、だから少し待ってて、多分もう少しで回復するから」


 手を合わせて俺達に頭を下げるアーネ。

 そういう理由ならば仕方ない、俺と彩はアーネの魔力が回復するのを待つことにした。


「でも、待ってる間どうするのよ? スマホは使えないし、テレビも無いし、外には出るなって言うし」


 アーネとユートいわく、同じ顔をしている俺たちが外に出るのは危険らしい。

 一国の姫であるアーネは言わずもがなだが、ユートも反乱軍から命を狙われている。

 同じ顔の俺たちが町や外に出るのはかなり危険らしい。

 しかし、だからといって屋敷に引きこもっているのも暇だ。


「あぁー!! 暇! 何かやる事ないの!?」


「ねーよ、ボードゲームも飽きたしなぁ……」


 俺と彩は昨晩二人で眠った部屋にいた。

 アーネの魔力が溜まるまでの間、ここで待つ事にしたのだが……暇すぎてそろそろ限界だ。


「ねぇ、なんか面白いことないの?」


 彩がベッドに寝転がりながら俺に尋ねて来る。

 そんな事を言われてもなぁ……。


「退屈なんだけど」


「俺に言うなよ……」


「ねぇ、そんなとこ居ないでこっち来たら? 立ってばっかりで疲れるでしょ?」


 お前の隣が緊張するから立ってるんだよ……。

 勘弁してくれ、二人きりってだけでもこっちは緊張してんだよ……てか、昨日俺良くここで寝れたな……疲れてたこともあるんだろうな……。


「じゃあ、俺はここで良いよ」


 俺は少し離れたベッドの端っこに座る。

 

「ちょっと」


「なんだ?」


「なんでそんな離れて座るのよ」


「え? あぁ……別に良いだろ、困る事もないし」


「そうだけど、なんか避けられてみたいで嫌なんだけど」


「そ、そんな事言ってもな……じゃあどうすれば良いんだよ」


「こ、こっち来なさいよ……」


「は、はい?」


 彩は頬を赤く染めながら、自分の隣の布団をポンポンと叩いてくる。

 一体彩は何を考えてるんだ。

 暇だから俺をからかって遊んでるのか?

 俺はそんな事を考えながら、彩の隣まで移動する。


「ほらよ」


「ん……本当に来たんだ……」


「お前が来いって言ったんだろ!」


 俺が文句を言うと、彩は俯きながら何かブツブツ呟いていた。

 

「ねぇ……」


「なんだよ」


「アンタって私の事……どう思ってるの?」


「え……」


 いつもと様子の違う彩。

 頬を赤く染めた彩は俺の方を見ながらそう尋ねて来る。

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