第43話

「な、なんでアンタが居るのよ!!」


「さ、先に風呂に入ってたんだよ! は、早く出てけ!」


「わ、私だってさっさと出て行きたいわよ! でもドアが……」


 彩はドアノブに手を掛け、必死にドアを開けようとしていたが、なぜかドアは開かなかった。

 恐らくユートの仕業であろう、先ほどの意味深な言葉の意味はこれか……。


「ちょ、ちょっと!! こっち見ないでよ! スケベ!」


「み、見てねーよ!!」


 彩すまん……そうは言ったがちらっと見てしまった。 おかげで風呂の中から出られなくなってしまった。

 

「な、何でも良いけど……か、風邪引くから風呂に入ったらどうだ?」


「い、嫌よ! アンタと一緒のお風呂になんか入ったら……妊娠するじゃない!」


「するか!! 風邪引くだろ! 俺は反対側向いててやるから……」


「うっ……し、仕方ないわね……」


 彩はそう言うと、体にタオルを巻いたまま浴槽に入ってきた。

 俺は彩の方を見ないように反対側を向いていた。  だがやはり気になってしまう……。

 見たい!

 本当は凄く見たい!

 だが、そんな事をしては嫌われてしまうので、俺はグッと我慢する。


「ぜ、絶対こっち向かないでよ! 向いたら殺すから!」


「あ、アホか! 誰もお前の裸なんてみたくねーよ!!」


「私のグラビアは大量に持ってるくせに……」


「ほ、ほっとけよ!」


「本当は見たいでしょ?」


「は、はぁ? きょ、興味ねーし……」


「あ-タオル取れちゃったー」


「えぇ!?」


 俺は彩の言葉に思わず、彩の方を振り向く。

 しかし、彩の体にはガッチガチにタオルが巻き付いていた。


「………」


「あ……えっと……これは……」


「スケベ……」


「……すいません」


 こいつ……はめやがったな……。

 しかしまぁ……タオル越しってのもなかなか……。


「今、またエッチな事考えてたでしょ」


「か、考えてねーよ……」


「ふぅーん……」


「な、なんだよ……」


「なんでもないわよ。私も疲れたから、少しゆっくりするわ、ドアも開かないし」


 ユートのせいでドアも開かないし、俺も上がるに上がれないしなぁ……。


「あ、あんまりこっち来ないでよね」


「お、お前こそ……」


「誰も行かないわよ」


 俺と彩はそれぞれ風呂で疲れを取り始める。

 年頃の男女が風呂で二人きり……しかも相手がアイドルとなれば、こんな最高の状況は妄想の中にしかない。

 今だけはこの状況を堪能しておこ……。

 しかし、流石にそろそろ熱くなってきた。

 そろそろ上がらないと上せてしまいそうだ。

 しかし、タオルは彩の方に置いてあるし……。


「彩」


「何よ」


「ちょっとタオル取ってくれ」


「え? あぁこれね、はい」


「ん、サンキュー」


 彩は俺に向かってタオルを渡してくれた。

 俺はそのタオルを腰に巻いて、浴槽から上がり、ドアの前に立つ。


「ん! 開かないか……おいユート! いい加減にここから出せ!」


 やっぱりドアは開かない。

 何か見えない力でドアが抑え付けられているような感じでビクともしない。


「やっぱり開かない?」


「あぁ、全然ダメだ……」


「私も熱くなって来ちゃったわ」


 彩はそう言うと、浴槽の縁に腰を下ろし、足だけ浴槽に入れて座り始めた。

 なんというか……色っぽい……またしても俺は立つ事が出来なくなってしまった。

 

「お、おまえなぁ……恥ずかしいなら少しは自重しろ」


「何よ、別にアンタが見なきゃ良い話しでしょ」


「そ、それはそうだけど……見ちゃうんだよ……男だから」


「結局はスケベなだけじゃない」


「う、うるせぇな! 仕方ないだろ男なんだから!」


 俺はそんなことを言いつつ再び浴槽に入る。





 私は現在悠人と一緒にお風呂に入っている。

 おかしいと思ったんだ、アーネがお風呂に入った方が良いと強く進めてくるから何かあるとは思ったけど……。


「まさかこんな事になるなんて……」


 昔は悠人と一緒にお風呂に入った事もあった。

 でも、今は互いに成長し、体だけなら大人と変わらない。

 はぁ……なんで私防水カメラ持ってこなかったのかしら……。

 こんなチャンスは滅多にない、悠人の肌を撮影出来る機会なんて!!

 はぁ……なんかまた悠人の体が引き締まったような……どんどん男らしい体つきになって……ってヤバイ、少し興奮してきた。

 

「ちょっと、あんまりこっち見ないでよ」


「見てねーよ!」


「見てるじゃない」


「背中向けてるのに見れるか!!」


 もう、本当はじっくり見たいくせに痩せ我慢しちゃって……。

 素直に言えば少しくらい見せてあげるのに……。

 私はそんな事を考えながら、悠人の背中をジーッと見ていた。

 昔は同じくらいの身長だったのに……今では私よりも大きくなって……。

 

「ねぇ……覚えてる? 昔一緒にお風呂入ったの……」


「ま、まぁ……あの頃は小さかったし」


「そうね……良く一緒に入ったわね……あんたが私と一緒が良いって言って」


「はぁ? 俺はそんな事言ってないだろ! それはお前だろ!」


「私はそんなこと言ってない! 私は仕方なくアンタとお風呂に入って上げてたの!」

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