第41話
*
「……そういう訳で、俺はこの世界に来たんだよ」
「間抜けな理由ね」
「ハッキリ言うなよ!」
俺は最初に通された部屋に戻り、彩と二人でボードゲームをしながら、この世界に来た理由を話していた。
「そういう彩はどうしてこっちの世界に来たんだよ」
「な、なんでも良いでしょ! それよりもアンタの番よ!」
「俺は話したのに……」
俺はそう言いながら、自分の軍のドラゴンのコマを動かす。
まぁ、彩もこっちの世界に来たのは良かった。
これで明日の約束は自動的に無くなった。
それに今は彩と部屋に二人きり……この状況はかなり嬉しい。
「うーん……どうしようかしら……」
彩はゲームの盤面を見ながら次の手を考えている。
このゲームは俺たちの世界で言うところのチェスのようなゲームで、互いに自軍の駒を動かし、先に王を倒した方の勝ちになる。
まぁ、駒にドラゴンとか不死鳥とかあるだけで中身はあまり変わらない。
「ユートは明日帰れるって行ってたけど……本当に帰れるのかね……」
「さぁ、私に聞かれてもね……でも、普通じゃ絶対出来ない経験だし、それに楽しんだ方が精神的にも楽でしょ?」
「そりゃあそうだけどよ……」
「あ、じゃあこうして私のかーち」
「あ! ちょ、ちょっと待て! 待ってくれ!」
「待たないわよ~だ、これで私の二連勝ね」
「くっそぉ~……」
また負けてしまった。
こう言うゲームはあまり得意では無いんだよなぁ……。
「それにしても……いつまで待たせるのかしら……」
「さぁな、そろそろゲームも飽きてきたな」
ユートとアーネから待っていろと言われて約一時間、そろそろゲームにも飽きてきたし……。
「なぁ、明日の買い物……行けなくなっちまったな……」
「仕方ないでしょ? お互いにこっちの世界に来ちゃったんだし」
「久しぶりの休みだったんだろ?」
「休みなんてまたあるわよ」
「そうだけど……楽しみだったんじゃ……」
「は、はぁ!? べ、別に楽しみなんかじゃないし!! わ、私はただ買い物に行きたかっただけで……」
「俺は……楽しみだったけどな……」
「ふ、ふぇ……?」
「あ……いや……その……」
思わず本音が出てしまった。
彩は俺の方を見て顔を赤く染めている。
恐らく俺の顔も相当赤いだろう、顔がもの凄く熱い……。
「な、なんで……楽しみだったのよ……あ、アンタはただの荷物持ちでしょうが……」
「あ……いや……その……」
言えない……お前と一緒だからなんて、恥ずかしくて死んでしまう……。
「お、俺も買いたい物が……あ、あったんだよ」
「そ、そう……それは残念ね……で、でもアンタこそいつでも買えるでしょ……」
いつでもどころか売ってねーよ……お前とデート出来る権利なんて……。
「限定だったんだよ……明日じゃなきゃ……意味がねー」
「そんな物買おうとしてたの? そんなお金良くあったわね」
「まぁな……でも……もっと良いもん買えたし」
「え? どういうこと?」
お前と二人で過ごせるこの時間だよ。
なんてホストみたいな甘い台詞なんて言えるはずもなく……俺は彩の質問を無視する。
「そ、そういえば遅いなユート達……」
「あ、ごまかした」
「遅いなぁ~」
そんな事を言った丁度その時、部屋のドアが二回ノックされ、中にユートが入ってきた。
「良い雰囲気のところ悪いけど……」
「「良くない!!」」
「それはそれは……まぁ、なんでも良いけど食事にしよう、付いてきてくれ」
ユートはニヤニヤと笑みを浮かべながら、俺と彩にそう言い食堂に案内し始める。
「ここだよ」
「相変わらず良い部屋だな」
「ありがとう、そこに並んで座ってくれ」
俺と彩は言われたとおり、並んで椅子に座る。
向かいの席にはアーネがニコニコしながら座っていた。
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