第40話

 家の中に入ると、目の前に大きな階段があった。

 高そうな壺に、高そうな絵、お金持ちのお屋敷というのが一目で分かる感じだった。


「おかえりなさいませ、奥様」


「ただいまサーリア、ユートは帰ってる?」


「はい、先ほど帰ってこられて……って奥様が……二人?」


「あぁ、ごめんなさいね、実は……」


「あ、いえ大丈夫です! 向こうの世界の奥様ですよね!」


「え、えぇ……なんだか冷静ね」


「先ほど同じようなことがありまして……」


 メイドさんだ、メイドさんがいる。

 私はサーリアと呼ばれたメイド服の女の子を思わず二度見してしまった。


「メイドまでいるの?」


「えぇ、メイドといっても、サーリアは大切な家族よ。奥様なんて呼んでるのもお客様が居るときくらいしか言わないの」


「そうなの? そう言えば似たようなことがあったって話したけど……どういうことなの?」


「あ、それはユート様の部屋に行けば分かるかと思われます。私はこれから四人分の食事を作らなければいけないのでこれで失礼します」


 サーリアはそう言うと小走りで屋敷の奥に消えて行った。

 

「一体何があったのかしら?」


「私は何となく事情が分かった気がするわ……」


 あの子のあの落ち着いた様子、そして私の正体を聞きもしなかった……。

 まるで前例を知っているかのような感じで……。


「ここがユートの部屋よ」


「あら? 新婚なのに部屋は別なの?」


「寝室は一緒よ、でもユートが剣や魔法道具を置いておく部屋が欲しいって言うから」


「書斎みたいな感じね……」


「でも、ユートったら毎日帰ってきたらここに籠もりっぱなしなの! もっと私は新婚らしくイチャイチャしてたいのに!!」


「はいはい、そういうのはドアの向こうの本人に言って」


 私はそう言いながら、部屋のドアを開ける。

 

「おい! ユート! 今のなんだ!」


「不死鳥の効果で僕のキングが復活したんだよ」


「なんだよそれ! チートだろ!」


「こう言うゲームなんだよ、はいナイトで君のキングを破壊して僕の勝ち」


「くっそぉ~……もう一回だ!」


「もう五回目だよ?」


 私は部屋の中を見てため息を吐く。

 まさかの予想通りだった、サーリアが私を見ても驚かなかったのは、先に悠人がここに来ていたからだ。

 悠人はユートと一緒にボードゲームをしていた。

 

「ん? あぁアーネ、おかえり」


「ただいまユート」


「アーネ……」


「ユート……」


 アーネに気がついたユートは、アーネの元に近づき、アーネを抱き寄せる。


「ちょっと、なんでアンタが居るのよ」


「彩!? お、お前こそなんでここに!?」


 私は悠人に近づき、ため息交じりに尋ねる。

 まさか本当に悠人が居るなんて……うれし……い訳ないじゃない!!

 何を考えてるのよ私!!

 

「な、なんだよ……」


「なんでも無いわよ! 死ね!」


「酷いな……普通に傷つくぞ……」


「うっさいわね! なんでアンタまでこっちに居るのよ!」


「いや……まぁ色々あって……そういうお前はなんでここに居るんだよ!」


「そ、それは……」


 言えない……パンツを回収しようとしたら、異世界に転移してたなんて言えない……。


「い、色々あるのよ!」


「色々ってなんだよ……それよりも……」


「まだなにかあるの!?」


「あの二人はソロソロ止めないと、キス以上の何かが始まる気がする……」


「あぁ……」


 私とユートが話しをしている間に、アーネとユートの雰囲気がなんだかエロい方向に向かっていってしまっている。


「アーネ……」


「ユート……」


「コラ」


「イタっ! もう! 何するのよ彩!」


 私はアーネの頭を小突き、二人の世界から無理矢理引き戻す。


「私たちも居るのよ! そういうことは他の部屋でやってきてよ!」


「じゃあ、ユート早速寝室に……」


「待ちなさい」


「あうっ! あ、あの……私一応……姫なんだけど……」


 私は部屋を後にしようとするアーネの襟を掴んで止める。

「私たちはこの世界の事何も知らないんだから! ちゃんと説明しなさいよ!」


「付いてきたのは彩なのに……」


「し、仕方ないでしょ! やっちゃったものは仕方ないのよ!!」


「逆ギレしてるよ……この人……」


 こうして、私と悠人は異世界に転移してしまった。 このまま帰れないとか無いわよね?

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