第34話
「まぁ、そうだけど……」
「そもそもあんたは! ……な、なんでも無いわ……」
「ん? 何だ?」
「な、なんでも無いわよ!」
彩はそう言うと、少し歩くペースを早くする。
何を言おうとしたかは分からないが、とりあえず彩は俺が他の女の子と仲良くしているのが気にくわないらしいな……。
今後はもっと考えて行動しないとな……。
横を見ると彩が頬を赤く染めていた。
「なぁ……」
「何よ」
「お前ってさ……俺の写真どれくらい持ってるの?」
「い、いきなり何よ!!」
「いや、なんか気になって……それにあんまり恥ずかしい写真とかはちょっと……」
俺は前々から気になっていた事を彩に尋ねる。
ユート達から見せて貰ったあの映像。
彩が俺の写真を隠し撮りしていた映像だが、実際どんなところを隠し撮りされているのか、俺は少し気になっていた。
「そ、そんなの……ほ、ほんの少しよ……」
「じゃあなんで顔を反らす……」
「す、数枚よ! 数枚!」
「この前の映像だとなんかアルバムみたいになってたけど……」
「うっ……す、数百枚よ……」
「す、数百!? お、お前! どんだけ撮ってんだよ!」
「う、うるさいわね!! アンタだって私の写真集大量に持ってるじゃない!!」
「お前のは販売されてる合法商品だろ!! 俺の隠し撮り写真は一歩間違えたら犯罪だぞ!」
「べ、別に第三者に流したりしてないから大丈夫よ! 私が使ってるだけだし……」
使ってるってなんだよ!
若干危ないワードに驚きつつも、俺は口を閉じた。
彩が少し変態っぽいことに気がつきつつも俺はそんな彩に引くどころか、少し可愛いなと思ってしまっている。
「な、なんでも良いけど……今度からは俺に許可をだな……」
「わ、分かったわよ……じゃあ今日撮影した五十枚は?」
「そんな撮ってたのかよ!」
「最近のスマホって便利よね? カメラの性能も良いし……」
「そういう話しじゃねーだろ!」
こいつ、いつの間に俺の写真を撮ったんだ?
俺がそんな事を考えていると、いつの間に家に到着していた。
「今度からは撮る時は言えよ」
「わ、分かったわよ……」
「本当かよ……」
そう言い終えると彩は舌をペロッと出した後、家の中に入っていった。
可愛いなぁ……おい……。
彩と居ると色々と心臓に悪い。
一緒に居るだけでドキドキするし、不意にしてくる可愛らしい仕草で俺の心臓は何度も止まり掛ける。
「明日……大丈夫かな……」
色々な意味で明日のデートが不安になってきた。
*
放課後、私は悠人を待ち伏せ一緒に家に帰宅した。
久しぶりに一緒に下校した。
小学生の頃以来だろうか?
懐かしい感じがしたのと同時に、当時とは何もかもが変わった事を実感した。
昔はそんなに大差なかった身長が、今では大きく追い抜かれてしまった。
昔は近かった二人の距離間も昔よりも開いてしまった。
「……うっ……まだ緊張してる……」
私は部屋に帰り、胸に手を当てて自分の心臓の動きの早さに驚く。
昔は平気だったのに、お互いに両思いだと知ったあの日から、私は悠人と会うと緊張してばっかりだ。
「はぁ……明日何着てこうかしら……」
私は鞄をベッドに放り投げ、クローゼットの戸を開ける。
洋服を取り出し、何を着ていこうか考える。
「これは……ちょっと子供っぽい? それともこれ?」
鏡の前で私は自分の体に服を当てて考える。
久しぶりに私はわくわくしていた。
悠人と久しぶりに二人で出かけられる。
それだけで私は嬉しかった。
「あ……でもサングラスとマスク……」
どんなに可愛い服を着ても、サングラスにマスク姿では台無しだ。
しかし、サングラスとマスクを付けなくては私がアイドルの成瀬彩音だとバレてしまう。
「はぁ……しょうがないか……」
私はため息を吐きつつ、いつも使っているサングラスとマスクを取り出す。
始めてのデートなのに……。
そんな事を思いながら、私は再び服を選び始める。
「あ! 一応……下着も……」
万が一の事を考えながら、私は下着が入っている引き出しを開ける。
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