第21話

「……そうだけど……」


「もぉ! いつまそんなウジウジしてるの!」


「だって……悠人が……」


「悪いのは悠人君だけじゃ無いでしょ!! 素直にならない彩も悪いわよ!」


 アーネの言う事も一理ある。

 私がもっと早くに素直になっていれば、こんな事にはならなかったかもしれない。

 でも、なんかそれは負けた気がするから、なんか嫌だった。


「す、素直って言われても……ど、どうするのよ……」


「簡単よ! 大好きって言いながら悠人君の胸に飛び込めば! これですべて解決よ!!」


 大好きと言いながら……悠人の胸に飛び込む……。

 ま、まぁたしかにそれは悪くないわね……悪くないって言うか……そのまま悠人の事を押し倒すのも有りかも……。


「彩、鼻血出てるわよ?」


「え? あ!」


 これは……あれよね……のぼせただけよね……。

 べ、別に悠人の事を想像して鼻血とか出してないし!!

 私はアーネより先にお風呂から上がり、部屋に戻った。

 アーネはもう少しゆっくりとお風呂に入るらしい。

 なんでもこっちの世界のお風呂は珍しいらしい。


「はぁ……悠人は……」


 私はふと窓の外にある、隣の悠人の部屋を見る。

 まだ明かりが付いている。

 何してるんだろ? 勉強? 悠人に限ってそれは無いか……。

 あーあ……悠人と前みたいに話し出来たらなぁ……。 そんな事を思っていると、ベッドの上の私のスマホが鳴った。


「ん? 誰かな……」


 村北さんだろうか?

 そんな事を考えながら、私はスマホのロックを解除して確認する。

 誰かからメッセージらしい……一体誰だろう?

 ぼーっと考えながら、私は差出人を確認する。


「えっと……差出人は……え!?」


 私は差出人の名前を見て驚き、思わずスマホを落としそうになってしまった。

 差出人は村北さんなどでは無く、以外な人物だった。 

「ゆ、悠人から!?」


 ヤバイ! なんか緊張してきた!!

 私は自分の心臓の音が早くなるのを感じながら、呼吸を整えメッセージを確認する。


【さっきの事で話しがしたい、今から話せないか?】





「こ、これで……いいよな?」


 俺はメッセージを送信し終えて、送ったメッセージを確認していた。

 

「だ、大丈夫だ……へ、変な事は送ってない!」


 俺は自分にそう言い聞かせながら、スマホをベッドの上に放り投げて、そのままベッドに寝っ転がる。

 もしも断られたらどうしよう……。

 そんな事されたら、俺は本格的にショックを受けてしまう。

 てか、多分死にたくなると思う……。


「はぁ……やっぱり送らなきゃ良かったかな?」


 いや、しかし……何もしないよりはきっと良いはずだ!

 今までは何もしなかったから、何も起きなかったが、今は違う!

 これからは変えて行くんだ!

 諦め掛けていた恋が実るかもしれないんだ!

 誤解を解いて彩との仲を元に戻す、これが今の俺の目標だ!


「そうだ、こんな事で嫌われてたまるかよ……」


 大体、さっきのアレは誤解なんだ。

 話せば彩だってわかってくれる!

 俺はそんな事を考えながら、彩からの連絡を待っていた。

 すると、少しして俺のスマホの通知音が鳴った。

 俺は直ぐさまベッドから飛び上がり、スマホに飛びつく。

 俺は直ぐにスマホのロックを解除し、メッセージを確認する。


【話したくない】


「えぇ………」


 いや、すんなりいかないとは思ったが……話すのも嫌かよ……。

 しかし、こんなところで諦める俺ではない!


【さっきの事を説明したい】


 俺は直ぐに彩にメッセージを送る。

 彩からも直ぐにメッセージの返信が来た。


【別に説明される理由ないし】


【誤解されたままが嫌なんだ】


【誤解って何が? 私関係ないし】


 うっ……なんて返信すれば良いんだ……。

 確かに俺たちは付き合っている訳では無いし……彩に関係ないと言えばそれまでだ。

 だが、俺は誤解されたままじゃ困るし……あぁぁぁぁ!! なんて返信すれば良いんだ……。

 女子とのやりとりってこんなに難しかったっけ?

 はぁ……仕方ない、メッセージでだけでも説明を……ん?

 俺がそんな事を思っていると、俺が返信をするよりも早く彩からメッセージが来た。


【どうしてもって言うなら、コーラ一本で話し聞いてあげる】


「マジか!」


 俺は驚き、思わず声を出してしまった。

 なんでいきなりこんな事を言い出したのだろうか?

 まぁなんでも良い!

 これで彩と話しが出来る!

 俺は直ぐに彩に返信をする。


【わかった、今からコンビニで買ってくるから少し待ってて】


【うん】


 俺は急いでコーラを買いに近くのコンビニに走った。 早く誤解を解きたい一心で、俺は何も考えずにコーラを買って家に帰って来た。

 そして、帰って来て気がつく。

 考えてみれば、今から彩と話すのか?

 時間は夜の21時、時間も遅いが彩は大丈夫なのだろうか?

 てか、どこで話すの?

 彩の誤解を解きたい一心で俺は他の事を考え忘れていた。

 そんな事を考えていると再び彩からメッセージが届く。


【外出て】


「外?」


 俺は彩に言われるままに外に出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る