第22話

「ん……やっと来た」


「あ、彩……」


 ドアを開けると、直ぐ目の前に彩がいた。

 部屋着姿で壁に寄りかかり、スマホを弄っていた。

 部屋着姿の彩なんて、見るのは始めてだ。

 風呂上がりなのか、なんだかいつも以上に良い香りがする……。


「で、何?」


「え?」


「話し……あるんでしょ」


「あ……えっと……」


 危ない危ない、彩の部屋着姿に見とれて、本来の目的を忘れるところだった……。


「彩、あのだな……西井とのあの行為はだな……」


「別にアンタが誰と何をしようが私には関係ないし」


 うっ……やっぱり怒ってる?

 それともヤキモチ?

 いや、どっちにしても嬉しいな!

 それって、少なくとも俺の事を意識してくれてるって事じゃん!

 まぁ、怒らせたままってのはまずいけど……。

 

「じゃ、じゃあなんでそんな怒ってるんだよ!」


「は、はぁ?! お、怒ってないわよ!」


「怒ってんじゃねーか! 口調も冷たいし!」


 そうだ、わからないなら聞けば良い!

 明らかに彩の態度は怒っている。

 ならば、なんで怒っているかを聞けば良い!

 あいつの怒っている理由なんて、俺が他の女とイチャツイテいたからに決まっている。

 いや……だって……あんな姿見てるし……。


「べ、別に怒ってないわよ! それに私は言ってるでしょ! アンタがどこの女とイチャつこうと関係無いって!」


「でも、いつも以上に口調がキツいのはなんでだよ」


「べ、別にいつも通りだし!」


「いや、いつものお前はもっと口調が優しい!」


「そ、そんなのテレビとかの印象でしょ! バラエティ番組とかならキャラくらい作るわよ!」


「じゃあ、なんで話したく無いって言ったんだよ!」


「あ、アンタと話したく無かっただけよ……」


「お前昔からそうだよなぁ……怒ると三日は口聞かねーの」


「なっ……そ、そんな事無いわよ!」


「いや、ある! 昔、俺が用事で遊べなくなった時だって……」


「あ、アレはアンタが悪いんでしょ!!」


「お前は昔から小さい事で……」


「う、うっさいわね! なんでそんな事をいちいち覚えてるのよ!!」


「まぁ……昔が一番……楽しかったからな……」


「え……」


 よし! これは結構ポイント高いだろう!

 だって彩の頬真っ赤だし、なんかモジモジしてるし!

 てか……やっぱり可愛いなぁ……そりゃあアイドルになっても人気だわ……。


「い、今よりも?」


「ま、まぁ……だって……あの……」


 言え! 言うんだ俺!!

 お前と話せ無くなったからだって言うんだ!

 そうすれば、俺と彩の距離は昔に戻る!!

 

「だって?」


「だって……」


 うっ……そ、そんな悩ましげな視線を俺に向けるな! 照れるだろ……。

 俺は彩に見つめられ、次の言葉が出てこない。

 ムカつくぐらい可愛らしいその容姿に、俺は改めて彩がどれほどの美少女なのかを再確認させられる。

 そして、俺はそんな彩の視線に照れてしまい、言葉を濁してしまった。


「わ、わーわー良く泣く奴がいなくなったからなぁ~! 弄れる奴がいなくてつまんねーわ!」


 俺の馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉ!!

 そうじゃないだろ!!

 俺は……ただ彩に側に居て欲しいだけなのに……。

 

「あっそ!!」


 彩は怒ってそっぽを向いてしまった。

 まずい……更に怒らせてしまった……。

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