第11話

「それで本題だけど……どうやらあの子もこの世界に来ているらしい……」


「それ、本当なのユート?」


「あぁ……」


 複雑そうな表情をするユートとアーネ。

 あの子とは一体誰なのだろうか?

 この二人はその人物を知っているようだが……。


「えっと……麗美ちゃんだったよね? この子があったのは、向こうの世界の彼女……レイミー……僕たちに呪いを掛けた張本人だ」


「え……」


 一番驚いていたのは西井本人だった。

 まぁ、呪いって聞いたら誰だってそういう顔になるよな……。

 それに、向こうの自分から聞いてた話しと色々違って、驚いてるかもしれないな。

 ユートは俺と彩に説明したように、自分達がこの世界に来た理由を説明する。


「……と言う訳なんだ、わかってくれたかな?」


「……そんな……私が……」


「いや、君じゃ無くて……向こうの世界の君だよ。君は何も悪くないから安心して」


 笑顔でそういうユートに、西井は頬を赤く染める。

 そんなユートにアーネとなんでかわからないが、彩まで頬を膨らませていた。

 

「にしてもさ、お前らはなんで向こうの世界の西井から呪いを掛けられたんだ?」


「それはきっと……彼女が魔王軍の反和平派だったからだと思う……」


 なるほど、魔王軍の中にも平和を望む者と戦い続ける事を望む二つの派閥があった訳か……。

 それで、和平を実現したユートに恨みを持った連中が、ユートとアーネに呪いを掛けたのか……。


「でも……彼女は僕の仲間だったんだ……」


「は? 裏切られたのか?」


「……うん……でも、結果としてそうなっただけで……僕は今でも彼女を信じているよ……彼女はそんな事をするような子じゃない」


 悔しそうな表情をしながら、ユートは拳を強く握る。 しかし不可解だ。

 呪いを掛けるなら、なんで死に直結するような呪いを掛けないのだろうか?

 好きな相手と結ばれない呪いなんて、言ってしまえば嫌がらせみたいな呪いだと思うが……。


「あのさ、お前ってその子と仲良かったの?」


「あぁ……敵だったけど、戦って互いに思いを言い合い、わかり合うことが出来た。そして、共に和平を望んで戦った……最高の友だ」


「うん、かなり信頼してたのはわかったけど、俺の顔でそんな決め顔しながら恥ずかしい事を言わないで」


 見てる俺が恥ずかしいんだよ!

 なんか厨二病になった自分を見てるみたいで!


「でも……彼女は……僕とアーネに呪いを……」


「そんな……」


 西井はショックを隠しきれない様子だった。

 まぁ、悪いのはこいつじゃなくて、向こうの世界のレイミーとか言う奴だけど……。


「なぁ、それじゃあなんでそいつは西井に俺を落とせなんて言ったんだ? 呪いを掛けただけで十分だろ?」


「恐らく確実に呪いの効果が現れるようにだろう……こっちの世界の自分が、君に好意を抱いている事を何らかの方法で知り、絶対に僕とアーネが結ばれないように保険を掛けたつもりなんじゃないかな?」


「なるほど……でも、それなら他の人間でも……」


「それは、自分から言われた方が説得力があると思ったからじゃないかな?」


 それにしても、わからない事ばかりだ。

 恨んでいるなら、直接暗殺でも何でも死に直結する事をすれば良いのではないだろうか?

 好きな人と結ばれないくらいでそいつの欲求は満たされるのか?


「こっちでもレイミーを探してたんだけど……まさかこっちの世界に……麗美ちゃん、もしもこっちの世界にレイミーが来たら、彼に知らせてくれないかい?」


「は、はい……あ、でも私……緒方君の連絡先知らない……」


「あぁ、じゃあ連絡先交換しようぜ」


「え! い、良いの?」


「ん? まぁ、連絡先くらい別に……問題も無いし」


「あ、ありがと!」


 そう言って喜ぶ西井。

 そしてその隣では、彩が凄く不満そうな顔で俺を睨んでいた。 

 な、なんだ? なんでそんな顔をしてるんだ?

 別に連絡先くらい良いだろ……。


「おっと……そろそろ時間だ、じゃあ頼んだよ」


「またね」


 そう言ってユートとアーネは消えてしまった。

 

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