第6話

「ちょ、ちょっと待ってくれ! なんでそうなるんだ!」


「うるせぇな! こっちはこっちで色々あるんだよ!」


「そんなの困るよ! こっちは結婚が掛かってるんだよ!」


「こっちだって将来が掛かってんだよ!」


 焦った様子でいうユートに俺は逆ギレ気味でそう言う。

 

「なんでなんだ! 君が彼女に好きだと言えば済む話しだろ!?」


「男としての意地があるんだよ!」


「そんなのどっかに捨てれば良いだろ!? とにかく彼女に土下座して、結婚して貰うんだ!」


「ふざけんな! そんな事したら、俺があいつの事を大好きみたいだろうが!」


「事実そうだろ!?」


「あぁそうだよ! ……あれ?」


 一体俺は何を言っているんだ?

 俺とユートが揉めていると、隣ではアーネと彩が揉めていた。


「なぜなの! 彼は貴方をあんなに思っているのに!」


「なんでトップアイドルの私が悠人ごときに告白しなきゃいけないのよ! 告白は普通男がするもんだし!」


「でも、貴方が一言好きと言えば済む話しなのよ

!」


「それ以前に! アイドルは恋愛禁止なの! ま、まぁ……あいつがどうしてもって言うなら、アイドルなんてやめるけど……」


 あっちも同じような感じの話しをしていた。

 俺も彩も考えは同じで、向こうから付き合ってと言わない限りは絶対に付き合わないという考えだった。

 そんな話しをしていると、急にユートとアーネの体が光始めた。


「な、なんだ!?」


「しまった! 時間が来てしまった!!」


「じ、時間?」


「あぁ、僕たちは長時間この世界に居ることが出来ないんだ! 一時間という制限時間を迎えたら、自動的に自分たちの世界に帰されてしまうんだ!」


「なんでも有りだな……」


 ユートとアーネの体が目映い光を放ち、少しづつ二人の体が半透明になっていく。

 俺はこの世の出来事とは思えない出来事に、ただただ驚きらながら、二人の様子を見ていた。


「ユート……」


「あぁ、そうだね。良いかい悠人! 絶対に彼女と結婚してくれ! 頼む!」


「彩! お願い! 必ず彼と一緒になって! お願い!」


「でないと!」


「そうじゃないと!」


「「私達が結婚出来ないから!!」」


 そうユートとアーネは言うと、薄くなって消えていった。

 先ほどまでユートとアーネがいた場所を見ながら、俺はポカンとしていた。

 まるで夢だったかのような出来事に俺はその場をしばらく動けなかった。


「な、なんだったんだ……」


「もう……なんなのよ……」


 二人きりになったリビングで、俺と彩はソファーに並んで座る。

 ふと隣を見ると彩と目があった。

 色々と暴露してしまっただけに、お互いに何か意識してしまい、お互いに顔を赤く染めて視線を反らす。

 

「ま、まったく! な、なんだったんだろうな……」


「そ、そうね……」


 恥ずかしい……。

 結果的に彩に写真を集めている事も、影ながら応援していたこともバレてしまった。

 そして、彩が俺の事を好きだったなんて……。

 なんか顔がにやけてくるな……。


「ね、ねぇ……」


「な、なんだよ」


 ニヤニヤしているところを急に彩に話し掛けられ、俺は直ぐさま表情を戻して答える。


「あ、明日……私の写真集出るけど……」


「よ、予約済みだっての……」


「せ、先週出たアルバムは?」


「さ、三枚買った……」


「ば、馬鹿じゃ無いの……さ、三枚なんて……な、何に使うのよ……」


「な、なんでも良いだろ……」


 一枚は使う用、もう一枚は飾る用、そして最後の一枚は保存用です。

 そんな事は口が裂けても言えないが……。


「お、お前そろそろ帰れよ! 今日はオフなんだろ!」


 これ以上一緒に居たら、心臓が保たない。

 両思いだとわかってから、一緒に居るだけでドキドキして、息が苦しくなってしまう。


「な、なによ! 私は邪魔だってこと!?」


「そ、そうだよ! さ、さっさと帰れよ!」


「だ、大好きなアイドルが横に居るのに、帰れなんて言う!?」


「お、お前と一緒に居ると、いつ隠し撮りされるかわからないから怖いんだよ!」


「りょ、了承を得れば何枚撮っても良いの?」


「そ、そういうわけじゃないが……」


「じゃあ撮らせて! はい!」


 パシャリ

 彩はスマホを構えて俺の写真を撮り始めた。

 別に撮って良いとは言ってないのだが、彩は止まらない。

 スマホの連写機能を使って、俺の写真を次々と量産していく。

 

「お、おい! 撮って良いなんて一言も!」


「な、何よ恥ずかしいの? ざ、残念ねぇ~、私はもう恥ずかしさでおかしくなってな…何をするかわからないわよ!」


「息を荒くしながら言うな!」


 彩は息を荒くして、顔を真っ赤にしながら俺の写真を取り続ける。


「か、帰れよ!」


「あ、あらぁ~? アンタも顔真っ赤じゃない? そんなに私と話せて嬉しい? 私と二人っきりが嬉しい?」


「あぁぁ!! うるせぇぇぇ!!」


 こうして、俺と彩は意図せぬ形でお互いの気持ちを知った。

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