第5話
「まぁ! 二人とも相性ぴったりじゃない!」
「これは結婚するしかないね!」
「「お前らは黙ってろ!!」」
ニヤニヤしながらそう言うユートとアーネ。
自分から言われていると思うと余計に腹が立つ。
「大体! 俺らがこんな感じになったのは、お前のせいだろ!」
「はぁ!? なんで私のせいなのよ!」
俺と彩の仲が悪くなった理由。
それは、彩が急に俺を避けるようになったからだ。
成長するに連れ、彩は俺と遊ばなくなり、それどころか、俺に冷たい態度を取るようになった。
「お前が急に冷たくなったんだろ!」
「違うわよ! そっちが急に私を避けるようになったんでしょ! 私はアンタに……」
「な、なんだよ」
「何でも無いわよ!」
顔を真っ赤にして怒鳴ったと思ったら、今度は泣きそうな顔をし始めた。
こいつは一体何を言いたいのだろう……。
「まぁまぁ、これで君たちは互いに両思いって事がわかった訳だし、早く結婚してよ」
「「出来るか!!」」
「えぇ!? なんでなの?」
俺たちの回答に驚くアーネ。
いや、急に結婚なんて出来るわけねーだろ……。
まぁ、別の世界では色々と違うのかもしれんが……。
「あのなぁ……俺らの世界では男は18歳、女は16歳にならないと結婚出来ないんだよ」
「そうなのかい? じゃあ早く成長してくれよ」
「出来るかっ!」
あっちの世界の俺って馬鹿なんじゃないのか?
真顔でとんでもない事を言い始めたぞ……。
「それじゃぁ……互いに両思いってわかっても、直ぐには結婚出来ないのね……」
「悲しい世界だね……」
「そうね……」
そんな可愛そう人を見る目で見るな!
俺たちの世界ではこれが普通のなんだよ!
てか、悲しい世界ってなんだ!
色々とツッコみたい気持ちを抑えつつ、俺はため息を吐いてユートに言う。
「ちょっと! なんかさっきから聞いてれば、私達がつ……付き合うみたいな流れになってない?」
「え? お付き合いしないの? 好き同士なのに?」
「そ、それは……」
彩はそう言って俺の方をチラリと見る。
いや、俺の方を見ないでくれ……。
確かに彩が俺を好きなのはわかった。
しかし、今更そんな事を言われてもどうして良いかわからないのが、俺の本音だ。
それと言うのも、俺は結構前に彩の事を諦めているからだ。
芸能界に入った瞬間から、俺は彩とはもう付き合えないのだろうと思っていた。
元々手の届かなかった高嶺の華が、更に手の届かない高みに行ってしまった気がしたからだ。
そんな天の上の人間と自分が釣り合うとも思えず、俺は一ファンとして応援していこうと決めていたのだが……。
「こっちの世界の僕は付き合いたいよね? ね? こんなに可愛いんだもん!」
「やめろ、近い近い!」
ユートは俺と彩をどうしてもくっつけたいらしく、グイグイ俺に迫ってくる。
自分の顔が迫ってくるって、結構嫌だな……。
「ま、まぁ? こいつが土下座して私の足でも舐めるっていうなら……か、考えてやらないことも無いわね……」
「あぁ? 隠し撮りばっかしてたくせに! 誰がそんな事するかよ!」
「あらぁ~? 目の前に大好きなアイドルが付き合ってあげるかもって言ってるのよぉ~? こんなチャンスめったに無いわよぉ~」
「別に大好きじゃねーし! お前こそ俺のこと大好きだろうが!!」
「アンタこそ嘘つかないでよね!! 授業中に私の事チラチラ見てるの知ってるんだからね!」
「なんだとぉ!?」
「なによ!!」
俺と彩は顔を突き合わせながら、そんな事を言い合う。
罵倒では無いのに罵り合っている見たいな感じになっている。
「もう決めた! 私はアンタが付き合ってって言わない限り、絶対付き合ってあげないから!」
「上等だ! こっちだって、お前から言わない限り絶対に付き合わね-よ!」
そんな事を言われたら、こっちだって意地になってしまう。
今ここで告白してしまったら、なんか負けた気がするし、付き合えたとしても尻に敷かれるきがした。
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