第86話 


 結局のところ、


 少女のお母さんは遊園地を一周した辺りで見つかった。灯台下暗しと言うか、最初に少女と出会った木々の反対側に居たというのだから驚きである。


「すみません、うちの子がご迷惑を。」


 少女の頭を手で押さえつけながら何度も謝罪する母親は、ザ・一般的な主婦さんだった。程々に少女を叱責し、「何かお礼を」と言ってくだっさったが、断った。


「ただのお節介ですから。それに、娘さんを連れまわすことになってしまってこちらの方がすみませんでした。」


 更に頭を下げる速度を速める少女の母親と、それに比例して少女の顔が「なにしてんのこの人たち」となっていた。


「あんたもちゃんとお礼言わなきゃだめよ」

「ありがとー、誰かのパパとママー」


 ・・・・まーたやってやがるよこのこ。


「あら、ご夫婦だったのですね。大事なお二人の時間を無駄にしてしまって申し訳ありません・・・ほら、アカリっ!」


「ありがとー」


 言いながら既に向こうに少女は歩きだしていた。なんたる精神力。面の皮が厚すぎる。


―――――――


「とんでもない子供だったな。」

「もしかして圭君って子供苦手だった?」


 苦手、ではないと思うけど。


「うーん、距離感難しいからな・・・なんともいえん。いや、でも妹居るしな・・・年下が苦手なわけでもないんだと思うけど。」


「圭君と妹さんの関係はまたちょっと違う気がするけど・・・」

「む、そうか?そんなことは・・・あるのか・・・」


「そうそう、ちょっと嫉妬しちゃうなー」


 むくりと膨れる玲奈にドキリとする。可愛いな。


「ま、何とかなってよかったな」

「そだね」


「「じゃあ」」


 声が被る。


 中断していたデートの再開だった。

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