第84話

「それでね、それでね、アカリはグルグル回る乗り物に乗ってたんだけど・・・」


「お母さんとはぐれちゃったのね」


 玲奈の言葉に、「アカリ」という名前の少女は頷く。

 少女の顔は随分と暗かった。

 まあ、迷子になってるんだと自覚したらそりゃ不安だよな。


「・・・うぅ、ママ・・・ママぁ・・・」


 誰に言うでもなく涙声になる少女。

 いかん、なにか言葉を掛けねば――


「大丈夫だよ、アカリちゃん。お姉さんたちが一緒にママ探してあげるからね」


 言って、少女を優しく抱きしめる。頭をポンポンと撫でながら、大丈夫と繰り返す。

 

「いいよね?圭君」

「勿論」


 子供をあやすのはどうにも得意ではないので、こういう役割を玲奈が担ってくれるのは非常に助かる。俺に出来ることは物事への対処でしかない。感情のケアは苦手だ。


 いや、まあそれさえも人助けボランティアを忌み嫌ってるが故の弊害なんだが。

 

 ともかく、俺たちは少女の母親を探すべく彼女の記憶に残っている場所を巡ることになった。

 本来であれば遊園地の係員さんに預けるべきなのだろうが、しかしまあそこは俺たちのいらぬお節介というところだとは思う。


 人助けもお節介も紙一重だからな。多分これはお節介だ。


「えへへ、お姉さんたち、優しいね」


 俺と玲奈に挟まれて大きく腕を振りながら、涙の跡を頬に残しながら、精一杯笑う少女。


「――ありがとっ」


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 お節介もやはりそう悪いものではないな、と思った。


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