第3話 見知らぬ彼女と初会話

「一体どういうことなんだ!?」

「突然私をつれて家から飛び出すなんてどうしたの?圭くん・・・」


 おいおい、どうしたのじゃねえよ・・・


 俺は理解不可能な状況を脱するためにこの女を連れて家を飛び出していた。


「朝ごはん食べ終わってないし・・・今からでも戻ろ?」


 上目遣いでパッチリと可愛い目を見せつけてくる。やめんか、可愛いだろ。


「ホントに大丈夫?体調悪いの?」

「なんでお前が俺の家に居たんだよ!?お前は昨日俺に・・・その・・・け・・・けっこ」

「何でってそんなひどいこと言わないでよ・・・そ、そりゃ圭くんは我慢してただけかもしれないけどさ・・・」


 制服を着こなす清楚系JKの典型な女の子を俺は泣かそうとしていた。


「でも・・・私はホントに圭くんのことが・・・」


 彼女の目に涙が浮かぶのが分かる。あかん。


「ま、まてまてまてまて!!その、そういうつもりじゃないんだ!責めようとかそんなんじゃなく単純に訳が知りたくて・・・」


 何故か俺がおどおどしていた。

 女の子を泣かすことはあまり誉められたことではないというのが一つの理由。

 もうひとつは、この女の子の振る舞いが演技には見えなかったから。


 妹がこの女の子を丸で前から来ていたかのように認知していたのも引っ掛かっていた。

 となると、ホントに俺には彼女がいたのか?俺、昨日まで幻覚でも見てたの?


 女の子はうつ向いていた。どうやら泣いているわけではないようだ。

 ここは一つ別の攻めかたをしよう。


「その・・・俺としてはお前のことが知りたいなというか・・・」


 そう言うと女の子はうつむいたまま

「お前って言うのやめてよ・・・玲奈って呼んで・・・」

 俺の制服の袖をぎゅっと掴んでいた。


「そうはいってもだな・・・」


「お願い・・・圭くん」


ギュッッッッ


 うんやめる。お前って言うの止めるからそんなに可愛いポイントあげないで??そんな潤んだ瞳で俺のこと見つめないで?


「れ・・・玲奈・・・」


 俺は仕方なく、ホントに仕方なく名前で呼んだ。


「なーに、圭くんっ」


 あぁーーーーーーーー

 その女の子はさっきまでの悲哀ただよう雰囲気を吹き飛ばすような笑顔を俺に見せた。


 その髪は昨日と同じウェーブのかかった黒髪ショートヘアー。

 その瞳は、

 その睫毛は、

 その体躯は、


 一見あの女の子と同じで、それでいてどこかあの子と違う。そんな確信があった。

昨日の子はもっとこう、ギャルというかイケイケというか、男たらしというかそんな感じ。


 けど、目の前にいる女の子は清楚で、おしとやかで、一途というかそんな感じ。

別人、似た人、というわけではなさそうだった。


「あっ・・・っと、えっと・・・その・・・」


俺があっけにとられているうちに女の子は元気を取り戻していた。


「さ、仲直りもできたし」

「い、いや仲直りって・・・」

「つべこべ言わないの。ほら、一緒に登校しよ?」

「お、おい待てって」


 俺は手を引かれていた。


 状況は未だ理解できなかった。

 彼女の正体も、妹との関係も、昨日のアレも。


 まあでも、この女の子の顔を曇らせることは許容出来ない俺だった。

 なぜ?ときかれれば

 本能で。

 としかいえないような、胃袋を捕まれたというか、落ちちゃってるというか。


 あぁ、甘いな俺。



 そういや新学期だったっけ・・・


 絡まりそうになる足を必死で回しながらそんなことを思い出した。



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