非モテの俺にプロポーズ!?
第2話 目が覚めたら見知らぬ彼女
「とりあえず、結婚しよ♥」
キリッとした凛々しい眉毛。
艶やかな長い睫毛。
ややウェーブのかかった黒髪ショートカット。
中背で華奢な体だが、発育は服の上からでもはっきり分かるほどよかった。
記憶力には自信がないが、この光景だけは後生忘れることはない。そんな漠然とした確信があった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
「ぬぅおぁっ」
つんざくような目覚ましの音で目が覚めた。
自分でセットした目覚ましなのに、毎回驚かされてしまうのは何とも言えない心地になる。
「夢・・・だったのか?」
ついそんな言葉がこぼれる。
昨日、学校の帰りに彼女と出くわして、結婚を申し込まれ、その後の記憶は・・・
・・・
だめだ、全く記憶がない。
彼女の麗しい容姿はしっかりと脳に焼き付いている。でも、それだけだ。
まあ、珍しい夢だったということなのか。
どうにも納得いかない、したくないような気分になりながら鳴り続ける目覚ましを止め、ベッドから立ち上がる。
「にいに〜! ごはんできてるよ〜!」
一階から妹の声がする。
『おーう、わかった!』
両親が長期の海外出張をしているので、食事は俺と妹で互いの分を作る当番制となっていた。相手を起こすのもその一環である。
うーん・・・
いつもの日常に少し安心しながら、それでもやはり昨日の彼女に心残りがあった。
結婚を申し込まれたことが嬉しかったとか、可愛い子と話せたことに感無量とかそんなんではなかった。
もっと根本的な、会えて良かった、みたいな・・・
「にいにったら〜! はやくー!」
「分かったってー!」
そろそろ妹が怒りだしそうな声になってきたので俺は考えるのを止め、パパっと制服に着替え階段をかけ下りた。
「おはよにいに」
「おう、おはよーさん」
「おはよう、圭くん」
「おうおう、おは・・・」
!?!?
な!?
俺の体は余りの驚きで後ろに大きく揺れ動いた。
「どうしたのにいに?そんな驚いた顔して」
「そうだよ圭くん、大丈夫?」
食卓に、妹と、昨日の彼女・・・が座っていた。
凛々しい睫毛に艶やかな云々。
だが昨日とはやや雰囲気が異なる彼女が当たり前のように食卓に座り、ほかほかのご飯を口にしていた。
昨日はもっとギャルっぽかったような・・・
「はやくにいにも食べなよ、遅れちゃうよ?」
妹は不思議そうに言いながら食べ終わった自分の食器を台所に運ぶ。
おい妹よ、いくらお前に落ち着きは大切だと説いてきたとはいえ、俺はそんな冷静沈着な妹を育てた覚えはないぞ。
俺は混乱しているぞ!
なぜ!
俺に婚約を申し込んできた女の子が!
夢の中の存在だと思っていた女の子が!
俺の家に居るんだ!!!!しかも普通に!!
ガタッ
椅子をぎこちなくさげ、腰を下ろしながら俺は思考を巡らす。
ま、まあ落ち着け、俺。昨日の今日で訳がわかっていないのは仕方ない。ここは情報収集を・・・
「ほーんと、玲奈さんはこんな兄貴のどこが良かったのー?」
玲奈?誰それ?
俺が困惑している間に、ウェーブのかかったショートカットの女の子は答える
「も〜恥ずかしくて言えないよそんなの〜」
「朝からのろけですか〜?」
「ち、ちがうよ! のろけとかじゃなくてその・・・全部好きなだけ・・・」
「もー!!! 玲奈さん照れちゃってかわいいー!!!」
俺は、状況を理解できなかった。
情報収集、失敗。
てかなにそのモジモジ。可愛いんだけどまじで。
昨日まで非モテで、昨日突然婚約を申し込まれ、目が覚めたら、彼女がいた。
なんだこの現実。
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