クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら魔王に遭遇したんですけど...
がいとう
プロローグ
スカーレット帝国玉座の間の最奥。
魔王の私室にて二人の女性が互いの手を握りながら悲壮な顔で話をしていた。
どちらの瞳も赤く煌々と輝き、緩やかなウェーブのかかった金髪は月の光を浴びてキラキラと輝いている。
背の低い少女が自分によく似た女性の手を掴んでその顔を見上げながら口を開いた。
「すまぬフレンダ。不出来な姉を許してくれ」
「いえ、お姉様は何も悪くありません。私が人質になどならなければこの様な事態にはならなかったのです」
「それは違う! 妾が魔王としてもっと権威を振るっておればこうはならなかった」
「お姉様は民の事を思い立派に国を治めていらっしゃいました。そう気に病まないでください。それに私は魔族随一の結界魔法の使い手。100年程度なら優に耐えてみせましょう」
「妾が必ずお主を迎えに来る。それまでは待っていてくれ」
「はいお姉様。私はお姉様の帰還を心よりお待ちしております」
「おい! まだ結界は破れぬのか!」
先程から部屋に張られた結界を破ろうと魔法やスキルを使った攻撃が絶え間なく続いている。
結界が破られるのも時間の問題だろう。
「お姉様! もう結界の維持も限界です。どうかお逃げください!」
「すまぬっ!」
少女は自分を姉と慕う女性の手を離し、側に描いてあった魔法陣に自分の血を垂らして詠唱を始めた。
彼女の細い指にはめられた指輪が共鳴するかのように強く光輝く。
「くっ! やはり転移魔法で跳ぶにはLVが足りぬか。じゃがっ、妾は千年を生きる魔王!この程度の不可能なんぞ乗り越えてみせよう!」
少女の口元から血が流れ、限界を超える力を使おうとしているのが伺える。
そして、結界が破られる寸前といったところで彼女の魔法は発動した。
「テレポーテーション!!」
少女のその最後の詠唱と共にその姿が掻き消える。
残された女性が愛する姉の無事を願って細く言葉を漏らした。
「どうかご無事で、我が親愛なるローズ・スカーレット陛下」
◇◆◇
少女が転移した先は暗い森の上空だった。
少女の指輪に嵌められていた宝石が光を失い、砕けて夜空に消える。
「ちっ、やはり強引な転移では願った場所には跳べんかったか。しかし、よりにもよってこことはな」
そう言葉を漏らした少女は最後の力を振り絞って落下地点を調整し、月を映す湖へと落ちていった。
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