第9話 悪役令嬢ざまぁの本質は『悪役令嬢はざまぁされるもの』というお約束を逆手に取った『お約束外し』

久しぶりに更新します!


ここからは「悪役令嬢モノのざまぁ」について、その「応用性の高さ」という特徴に焦点をあてて考察していきたいと思います。


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<< これまでの振り返り >>



ここまでの『ざまぁ考察』では、


『ざまぁモノ』の面白さは『お約束によって生じる面白さ』であること。


また、多くの人々は幼少期にざまぁ構造に基づく童話を読み聞かされて育っており『ざまぁモノ』を楽しむための『お約束』を共通認識として理解していること。


ざまぁ構造に基づく童話は、童話の中でも知名度が高く人気であること。


『追放テンプレ』は人が本来忌避する、『不条理かつ一方的な権利の剥奪』を行うことによって、読者に強い関心を引き起こすというテクニックを使用しているということ。


本来であれば見るのも不愉快な『追放』という悪しき行為であるが、『追放テンプレ』では『展開のお約束化』『序盤の超高速化』『修行を気付きに置き換えること』などの工夫によって、ストレスフリー化を実現しているということ。


古典にみられる『追放モノ』の中には単純な復讐ではなく『大人の視点の導入』によって陳腐化を回避している作品も存在するということ。


などを考察してきました。



今回からは追放テンプレと並び、ネット小説界隈において大流行している『悪役令嬢テンプレ』に焦点をあて、『悪役令嬢にみる”応用ざまぁ”』について考察していきたいと思います。



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第四章 『悪役令嬢にみる”応用ざまぁ”の考察』



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◆◇◇◇◇◇◇



悪役令嬢ざまぁを考察する前にまず『悪役令嬢テンプレ』とは何かについて定義しておきたいと思います。



―『悪役令嬢テンプレの大まかな流れ』―


□主人公の属性


中身は普通の一般人であることがほとんど。


転生先では身分の高いお嬢様キャラであり、乙女ゲー(あるいは少女マンガ)の主人公に敵対し嫌がらせを結果『ざまぁ』されることが宿命付けられている『やられ役』であることがほとんど。



□ストーリー展開


1.何かのきっかけで、自分がいま生きている世界は実は乙女ゲー(あるいは少女マンガ)の世界であり、しかも自分が『やられ役の悪役令嬢である』という事に


※気づくタイミングはストーリー序盤が多い。


※なお転生した理由について序盤から考察したり深く探求したりすることはあまりない。



2.前世の乙女ゲー(あるいは少女マンガ)知識を活かして、やられ役の運命である『バッドエンド』を回避しようと立ち回る。


ここで主人公の行動方針が大きく分けて二種類に分かれる。



『主人公乗っ取り型』


ゲーム内で起こるイベントを先回りしクリアするなどして、本来の主人公の役割を乗っ取る。

※なお本人が意図せず”結果的にそうなってしまう”という展開も多い。



『スローライフ探求型』


ゲーム内での悪役令嬢としての役割を早々に放棄し、スローライフにいそしむ。

※しかし本人が意図しようがしよまいが、乙女ゲーの展開には巻き込まれる。



3.主人公はバッドエンドを回避し、幸せを手に入れる。



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ただし重要なのは、この大まかな流れに当てはまらない悪役令嬢モノも多く存在するということです。


※なお現地主人公の『婚約破棄ざまぁモノ』も悪役令嬢モノと共通する部分も多いと思われるかもしれませんが、ここでは別のものとして扱います。



◇◆◇◇◇◇◇



【 悪役令嬢モノの根幹にあるもの 】



現在のネット小説で大流行している『悪役令嬢モノ』ですが、その根幹にあるものが何かと考えると、


『悪役令嬢はざまぁされる運命である』というお約束(共通認識)に対する、『』であると思われます。


悪役令嬢モノでは『本来ざまぁされるはずの悪役令嬢がざまぁされない』という意外性が、読者の興味・関心を引き起こしているのです。


つまり悪役令嬢モノの本質は『お約束』があることを前提とした上での『お約束外し』であり、テンプレでありながら『アンチ・テンプレ』という側面も併せ持っているのです。



◇◇◆◇◇◇◇



『お約束外し』について



「お約束外し」はお約束があることを前提とした上で、あえてそのお約束を外すことで『』を生じさせるテクニックです。


これまで、ざまぁの面白さは『お約束の面白さ』であり、「そうなるであろうと予測できることが、実際にそうなることで生じる面白さ」こそが『ざまぁの面白さの本質』であると考察してきました。


しかし悪役令嬢モノでは『お約束』単体の面白さだけではなく、それを利用した上で『意外性の面白さ』も表現しているのです。



◇◇◇◆◇◇◇



しかしお約束をあえて外す『お約束外し』をしてしまえば、意外性の面白さを表現することは出来てもお約束の面白さが失われてしまうのではないかと思われるかも知れません。


でも心配は無用です。


なぜなら悪役令嬢モノでは『お約束外し自体がもはやお約束化している』からです。



◇◇◇◇◆◇◇



元々は『本来ざまぁされるはずの悪役令嬢が逆に勝利する』という展開は多くの読者にとって意外なものであったと思われます。


しかし悪役令嬢モノが大流行した現在となっては、もはや悪役令嬢が勝利する展開の方がお約束化していると言えます。


なので悪役令嬢モノにとってはこの『お約束外し』自体がもはや作者・読者にとってのお約束であり、そこには確かに『お約束から生じる面白さ』があるのです。



◇◇◇◇◇◆◇



また同時に『お約束外し』による意外性の面白さも表現できる悪役令嬢モノは、作者がストーリー展開に創意工夫を加えることのできる余地も大きいのが特徴です。


お約束の面白さを全面に押し出す『なろうテンプレ』は、『どの作品も似たり寄ったりなものにならざるを得ず陳腐化してしまう』というデメリットも持っています。


(それでもそこそこ評価されてしまうということがなろうテンプレの功罪と言えます)


しかし、根幹の部分でお約束外し構造に基づいている『悪役令嬢テンプレ』では『お約束外しによる意外性の面白さ』を堂々と付与することが可能であり、『テンプレでありながらも、』と言えるのです。


つまり悪役令嬢モノの面白さは『ハイブリッド型』なのです。



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◇◇◇◇◇◇◆



<< 今回のまとめ >>


悪役令嬢モノは『悪役令嬢はざまぁされる運命』という誰でも知っている『お約束』を逆手に取った『お約束外し』によって、『意外性の面白さ』を表現している。


本来ざまぁされるはずの悪役令嬢がざまぁされずに逆に勝利する展開はもはやお約束化しているため、悪役令嬢モノではお約束の面白さも楽しめる。


元々がお約束外しに基づいている悪役令嬢モノは、テンプレでありながらも、お約束外しという作者の独自性を加えることのできる余地が大きく、応用性の高いテンプレであると言える。



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<< 次回予告 >>



次回は『転生』の概念の導入によって、自分自身は悪くないけどを表現することに成功した悪役令嬢テンプレ。


敵を『』に設定することによって、個人に対する報復ではなく、より高次元なものに対する『』を表現することに成功した悪役令嬢テンプレ。


などについて考察していきたいと思います。



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