第7話 『追放』が便利な理由の考察④ 『お約束化』によってストレスフリー化を実現した追放テンプレ
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【 『お約束化』によってストレスフリー化を実現した追放テンプレ 】
さてここまで考察してきて、疑問として残るのが『追放テンプレ』が『序盤の負け描写のストレスフルさ』をどの様にして軽減しているかです。
『負け描写』が主人公に感情移入しようとする読者の心を削ぐのは明らかであり、普通に考えればそれを最序盤にもってくることなど危険極まりないはずです。
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そこで、『追放テンプレ』においては以下の方法でそれを軽減しています。
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① 序盤展開の超圧縮
『追放 → 実は強かった事に気づく → 俺TUEEE!!』を超高速で行うことによって、ストレスフルシーンを超圧縮している。
② 読者の共通認識を利用した『お約束』の利用
負け描写があったとしても『序盤の負けはあくまでもお約束の負け』という読者が持つ共通認識を利用している。
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① 序盤展開の超圧縮
追放テンプレでは、ストレスフルシーンである『追放から最強に気づくまでの一連の流れ』を超高速で行うことによって、ストレス軽減を実現しています。
極端な例では一行目からいきなり追放宣告でストーリーが始まることすらあります。
そのことによって、主人公は速やかに組織から離脱し、『実は元から最強だった設定』に気づくまでの時間を極端に圧縮することを可能としているのです。
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② 読者の共通認識を利用した『お約束』の活用
また追放テンプレ作品における特徴としては、タイトル・あらすじの時点で『追放テンプレ作品であること』を暗示、あるいは明示していることが挙げられます。
その効果は絶大です。
なぜなら『追放テンプレ』というもの自体がネット小説界隈に定着した結果、あえて言わなかったとしても『追放された主人公が実は最強であること』や『追放した側がいずれ”ざまぁ”される運命であること』を読者は勝手に理解してくれるようになっているのです。
このことによって『序盤に主人公が理不尽な理由で追放される』というストレスフルシーンがあったとしても、読者は『
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これはもはや伝統芸能。
作者も読者もお互い『あえて言わなく分かっているよね』という『お約束』
追放テンプレはもはやそれ自体が『お約束化』しており、その面白さの根本にあるのは『お約束の面白さ』なのです。
――――――― ここまでのまとめ ―――――――
『追放テンプレ』では序盤展開を超高速化することで、ストレスフル描写を超圧縮している。
『追放テンプレ』では読者が持つ共通認識を利用し『序盤の負け展開はあくまでもお約束の負け』であることを暗示または明示することで、読者の心へのダメージを軽減している。
そして、『追放テンプレ』は『もはや文化』と化しており、その面白さの根本にあるのは『お約束の面白さ』と言える。
つまり読者が『そうなるだろうな』と予想する展開が『実際にそうなる』ことでの、期待が満たされる面白さを表現している。
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<< ここまでのまとめ >>
ここまでの考察では『追放テンプレ』について以下の様に論じてきましたので少しまとめてみます。
① 追放テンプレの源流は『みにくいアヒルの子』
② 『みにくいアヒルの子』にみられる『気づき』による『実は元から強かった設定』の発現は不人気な修行描写を省略することを可能とする。
③ 追放が真に意味するのは『所属する権利の剥奪』
④ 人間は『権利の剥奪』というもの自体に忌避感を持っており、関心を示さずにはいられない。
⑤ 『追放テンプレ』はあえてそれを『正当な理由なく』かつ『一方的』に行うことで強力な読者引き寄せ効果を発揮している。
⑥ またこの忌避感を使ったテクニックは『追放テンプレは不快』という読者が一定数存在する理由の説明づけにもなる。
⑦ 追放テンプレでは『疑似ゼロスタート』によって、登場人物の説明や人間関係の説明を『主人公と読者が同じ視点でたどる事ができる』ため分かりやすい。
⑧、また最序盤での『追放』は、分かりやすい『被害者・加害者という因縁設定』を読者に印象づけることを実現している。
⑨ 追放後の自由行動はオリジナリティの付与を容易にしており、そのことが書きやすさにつながっている。
⑩ さらに追放テンプレでは序盤展開を超高速化することで、ストレスフル描写を超圧縮している。
⑪ また読者が持っている共通認識を利用することによって『序盤の負けはあくまでもお約束の負け』であると思ってもらえるのでストレスフリー化している。
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さてここからは『追放テンプレ』がもつ『ざまぁ』について触れていきたいと思います。
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追放テンプレにおいて『ざまぁ』される対象者は明らかに『主人公を追放した側』であり、『
そのざまぁパターンとしては以下の3つが考えられますので、少し検討していきたいと思います。
① 追放した側が自爆するパターン
② 主人公が積極的に直接報復するパターン
③ 主人公が消極的に直接報復するパターン
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① 追放した側が自爆するパターン
最も使われていると思われるのが『追放した側が自爆するパターン』です。
この自爆にも様々な種類がありますが、メインは『実は主人公は組織を影で支えていた有能な人物』であったことが後になって発覚し、主人公の脱退によって組織が崩壊しするというものです。
※なおこのパターンは②・③と合わせて用いられることもあります。
このパターンのメリットとしては、主人公は直接手を汚すこと無くざまぁが表現できるため、②で見られる様な主人公が読者に嫌われるという展開を回避できることが挙げられます。
② 主人公が積極的に直接報復するパターン
このタイプでは主人公は追放側に明確な恨みを持っており、積極的に追放側に攻撃を仕掛けます。
一方でこのタイプでは追放側もそれなりに抵抗するので、そのバトルが物語のメインになります。しかし、なんだかんだ言っても主人公が一方的に勝つことは運命付けられていますので、苦戦したり負けたりする役割は主人公の仲間が担うことになります。
このパターンのデメリットとしては、積極的に報復を行うことで
先の考察でも取り上げましたが、例え正当な理由があったとしても人間は権利の剥奪を行う者に対して嫌悪感を感じてしまうのです。
よってこのタイプでは主人公が読者に嫌われてしまう可能性を秘めていると言えます。
③ 主人公が消極的に直接報復するパターン
主人公が嫌われることを回避する策として使われるのが、消極的に報復するパターンです。
このパターンでは、復讐しなければならないというストーリー側からのなんらかの理由を付けを用意することで、主人公は嫌々ながら仕方なく復讐を実施することになります。
メリットとしては、主人公が人格者であるという設定を維持することができる点が挙げられますが、一方で敵側がバカっぽくなる=雑魚っぽくなるというデメリットもあります。
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この様に『追放テンプレ』における『ざまぁ』はなんだかんだ言っても結局は『追放した側』が罰を受けることによって表現されています。
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しかし『追放テンプレ』の源流であると論じた『みにくいアヒルの子』では主人公の白鳥はアヒルたちへの報復は行っておらず、またアヒルたちも別に自爆していません。
その代わりに、みにくいアヒルの子では『気づき』、つまり『
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そこで次回は追放テンプレざまぁ考察の最終回として、人類の歴史や古典の中から、視点を変えることで表現される『気づきのざまぁ』すなわち『
<< 次回:『追放テンプレ、その先にあるもの』>>
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