第72話 手相主義
世の中に空前の手相ブームが到来した。ただ単に手相ブームといっても占いの類などの迷信めいたものでは無く、それは手相主義などと呼ばれている。
高校入試や大学入試には知能線での点数が加算され、企業に至っては手相だけを見る手相面接が行われている程だ。極め付けは、結婚相手も手相お見合いなる形で互いの手の写真を吟味し合うのだとか。まさに手相で人生が決まるといっても過言では無い。
人々は賢くなる為に知能線を掘り、モテたいが為に感情線を掘る。そんな社会現象の象徴として、一時期カッターナイフが文房具屋から消えたそうだ。
メディアも連日、手相の報道を繰り返した。
「成功者の手相は完璧! なぜなら手相は嘘をつかないのだ!」
それもそのはず、より良い手相を求めるべく富裕層達は手相の整形手術に躍起になっていたのだから。
なんだかんだと物議を醸しながらも手相ひとつで自信を手に入れられる世の中はうまく循環し、誰も手相主義を疑う事が無かった。
しかしそんな中、手相主義に疑念を抱く大事件が起こった。結果その事件が手相主義に終止符を打つ事になる。
その事件とは、全国の老人ホームで次々に集団自殺未遂が起こったのだ。不可解な出来事にテレビ記者が現場へと急行し、その様子が生中継される事になった。
意識を取り戻した老人に記者が聞く。
「どうしたのですか?」
「長生きしたくて、生命線を手首まで伸ばしたんじゃよ……」
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