第69話 恩返し
コンコン、コンコン。
深夜2時。玄関をノックする音に目が覚めた。何事かと扉を開けるとそこには20代前半であろう可愛らしい女の子が突っ立っていた。女の子は頬を赤く染め、少し恥じらいを見せながら口を開いた。
「あのー、一晩泊めて下さい」
寝起きだからか頭が回っていない。聞き間違いだと思い「ウチで合ってますか?」と確認するが「あなたの家で一晩泊めて下さい」と今度は、はっきりと答えられた。勢いそのまま家に上がり込む女の子に俺は抵抗出来ずにいた。
「タダでとは言いません。そちらのお部屋をお借りしてもよろしいでしょうか?」
女の子はそう言い、物置として使っていた和室を指差した。丁寧過ぎる言葉遣いに違和感を覚えつつも、女の子の意思の強い表情の前に俺は頷く事しか出来なかった。
「後、パソコンとWi-Fiを用意して下さい。それと作業中は絶対に覗かないで下さいね」
この流れはあれだよな。昔話の流れとは随分違うが……確か……ツルの恩返しってやつだよな。身に覚えがある事はある。1カ月程前、田舎の秘湯巡りに行った際、狩猟罠に掛かった野鳥を助けた事がある。その時のあいつか……。
その後、女の子は1泊のつもりが実に10日間も俺の家で寝泊りをしている。女の子は用意したパソコンとWi-Fiを駆使して仮想通貨や株取引をしているようで俺の資産を順調に増やしていった。
「あの、次の取り引きは大きいので20万円ほど用意できますか?」
「もちろん」
女の子を信用していた俺は何のためらいも無く、湯水の如く貯金を投資へと回した。
そんなある日、全財産である1000万円の投資を頼んでから女の子が和室から出て来なくなった。悪いとは思いながらも俺は心配の一心で和室の扉を開けてしまった。
すると、そこには開けっ放しの窓と数枚の鳥の羽らしきものが散らばっていた。見慣れない灰色の羽。俺は興味本位で傍らのパソコンでその羽の特徴をネットで検索してみた。
そこにはこう記されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます