第56話 甘嘘ガムシロップ

(会いたいよー♡)



 彼からの他愛も無いメールの着信に心が躍る。



 ただの電子文に気持ちが高鳴る自分が馬鹿みたいで私は緩んだ口角を無理やり下げた。



 今まで、苦味の無い甘ったるいコーヒーを飲む人の気持ちがわからなかった。



 わざわざ嫌な所に目を瞑り、良いところを模索しようとしている様が滑稽で……。



 まぁ、今になればわかる……とまでは、いかないがわからない事もない。



 甘さの後に来る苦味が、またその甘さを助長させる……と言った所か。



 きっと、人生も甘いだけでは満たされないのだろう……なんて、自分に言い聞かせる日々の中、今日も私は彼のガムシロップの様な甘い言葉に満たされている。



 所詮私は不倫相手。



 黒くて苦いあなたの心が嫌いでも、嘘の甘さを求めてる。



 わかっていても、やめられない……。



 きもちが溶けて、あいが薄まるその日まで。

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