第49話 本質のド真ん中
ある日、失敗続きのリポーターがテレビ局員の上司に呼び出された。
「お前には、ガッツがない! 激辛グルメのリポートでは、辛味の元である調味液を退けて食べたり、山頂絶景リポートでも、しんどいからって山の中層からリポートしただろ? そんなんだから、視聴者に伝わらないんだよ! 本気でやれ!リポートってのはな、本質のド真中に突っ込む事なんだよ! ガッツ見せる為に一回、台風の中で中継でもやってみろ!」
上司の喝に感銘を受けたリポーターは奮起した。
「はい! やらせて下さい!」
後日、大型台風接近に伴い、リポーターが運転手とカメラマンを引き連れ台風の元へと車を走らせた。
「ここから先は、車が倒れます」
運転手を1人車に残すと、リポーターとカメラマンは合羽を羽織り、大型台風へと向かって歩き出した。
横殴りの雨と暴風が吹き荒れる中、
「もうこの辺でいいんじゃないですか? これ以上行ったら……」
と言う、カメラマンの忠告を無視し、決意に満ちた表情で10分程ズカズカとリポーターは歩を進めた。
「よし、今だ! ここで中継を繋げてくれ」
「えっ?」
「早くしろ!」
リポーターの強気な発言にカメラマンは慌てて中継を繋げた。
「はい、こちらリポーターの磯貝です。只今、大型台風17号のド真ん中から中継をしております。晴れ渡る青空は正に快晴となっておりまーす。現場からは以上でーす」
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