第45話 バッテリー

 残業終わりの深夜1時、音を立て無いようにゆっくりと玄関のドアを開ける。



 その時にふと、昔の事を思い出した。



「どうして、お父さんはプロ野球選手じゃなくてサラリーマンなの?」



「ごめんよ、かっこ悪いよな。でもな、母ちゃんは凄いキャッチャーなんだぞ」



「何それ、よくわかんない」



 当時、小学生だった頃、俺が交わした父親との何気ない会話……。



 含み笑いを堪えつつ、リビングの灯りをつける。



 今日もリビングの食卓には、ラップの貼られた3つの小鉢と焼き魚。ご飯の入ったお茶碗の下には「お疲れ様」と書かれたメモが添えられている。



 毎日、俺が全力投球で仕事に臨めるのも、女房役のおかげだな。



 父親の言葉の意味がやっと分かった。

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