第44話 不器用

 仕事の帰り道、闇夜に光る黄色い眼光と目が合った。



 その黄色い眼光は、のそのそと近づいて来たかと思うと、毛並みを逆立てながら「シャー」と威嚇してきた。



 その瞬間、俺はその不器用過ぎる表現に自分を重ね合わせていた。



 愛されたくて、近づいて……。



 でも……怖くて……遠ざけて……。



 気がつくと、俺は嫌がるそいつを抱きしめていた。



 そいつは、小刻みに震えながら俺の腕を掻きむしり抵抗するものの、その力は明らかに弱く、加減しているのがわかった。



 次第にそいつは、その抵抗さえも止め、腕の中で「グルグル」と喉を鳴らし始めた。



 その時、なんで、そうしたのかは、わからない……。



 でも、狭いアパートの一室で今日もそいつが俺の帰りを待っている。



 それ以上でも以下でもにゃい。

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