第38話 花は口ほどにモノを言う
あれから、ちょうど1か月か……。
24歳という若さで余命宣告を受けた私は、迷う事も無く2歳年下の彼を病室へと呼び出し、別れを告げた。
彼はまだ若いし、先もある。
ましてや、彼女が死ぬなんてトラウマを残させたくもない。
私の
「好きじゃなくなったから、別れよ」
という、最初で最後の大きな嘘を彼はすんなりと受け入れてくれた。
元々、職場の花屋さんで知り合っただけの関係。
私が店長で彼がバイト。
所詮は、寂しさという空白を埋める為だけに付き合っていたのだろう。
彼の最後の言葉も、
「そうしたいなら、そうしましょう。僕も好きじゃないです」
寂しい様な気もするが、心残りは何も無い。
ほんのちょっと、ワガママを言うなら、もう少しだけ未練がましくして欲しかったかな……。
なんてね……。
でも、別れを告げた翌日、彼が私の病室に来た時はビックリしたな。
ベッドで横たわる私に目もくれず、ただただ花瓶の花を替えると逃げる様に病室から去って行ったんだもの。
ピンク色の胡蝶蘭を残して。
あーあ……。
これじゃ、どっちも嘘つきじゃんか。
花屋の店長が花言葉を知らない訳ないでしょ、バイト君。
そうして私は、薄れゆく意識の中、覚ますことの無い目をゆっくりと閉じたのだった。
白いアザレアの花を思い浮かべて……。
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