第32話 宇宙遠足
時は2500年ーー
2300年代後半から宇宙開発が急速に進み、人々は気軽に宇宙へと行けるようになった。
そんな事もあり、小学生の遠足先でも宇宙というのは当たり前の様になっていた。
「はーい、みんな宇宙服は着ましたかー?」
先生の呼びかけに子供達が口々に答える。
「はーい」
「着ましたー」
「着れたー」
中には、コソコソとこんな声も聞こえる。
「お前の宇宙服ブカブカだな?」
「仕方ないだろ、お兄ちゃんのお下がりなんだから……」
「てか、宇宙食三百円分って少なくね?」
「俺、お兄ちゃんに聞いたんだけど、バナナって宇宙食に入らないらしいぜ」
「マジかよ、すげー」
出発前の興奮でざわめく子供達を余所目に先生がいそいそと指揮を執る。
「はーい、じゃあ順番にスペースシャトルへ乗って行ってねー」
初めてのスペースシャトルを前にして、泣き出す子や駄々をこねる子もいたが、先生の説得もあり、全員無事に搭乗する事が出来た。
「はい、じゃあ出発しまーす」
先生の号令と共に始まった宇宙遠足。
期待と不安が入り混じる中、スペースシャトルは無事に大気圏を突破した。
「はーい、みんなー、宇宙に着きましたー。そしたら、右の窓から見える紫色の大きな惑星を見てくださーい」
先生の声に子供達が一斉に窓の方へと視線を向ける。
そして、先生は授業口調のまま話を続けた。
「あの紫色の惑星が今から遠足で行く地球という惑星です。私達人間が火星に移り住む前に住んでいた惑星ですね」
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