第21話 涙の理由
「あいつ、肌黒くね?」
「地黒?」
「黒過ぎでしょ?」
その言葉を皮切りに……始まった。
集団による言葉のイジメだ。
その言葉の数々は肌の黒さを指摘した発言が多く、あまりに過激だった。
「黒デブ」
「黒タンク」
「黒ブタ」
クラスのみんなから執拗に容姿を指摘された女子生徒はついに人目をはばからず泣き出してしまった。
教授は我慢の限界だった。
普段なら、生徒の揉め事に一切口出ししないのだが、その原因が差別とあっては別だ。
何故なら教授のキャリアは〝国際教養学部〟一筋40年。
特に差別問題に関しては強い憤りを感じていた。
普段温厚な教授が机を叩いて、大きな声を張り上げた。
「聞きなさい!」
一瞬にして静まり返る教室で教授は、大きな声でこう続けた。
「人種差別!それは、人間が行うもっとも愚かで滑稽な行為だ!君たちは肌の色が黒いからという理由で執拗に容姿を指摘し、罵倒するのか? ならば私はそんな貴方達を軽蔑し、差別します!差別に対して差別で応えるのが正解では無いと思います、ましてや、教授が生徒を差別するなんて、さぞかし大問題でしょうね? 処分? クソ喰らえです!目の前で行われている人種差別まがいの行為を止められるならね!」
パチ……パチ……。
パチ……パチ……。
パチパチパチパチパチパチ。
教授の捨て身の演説に教室はスタンディングオベーションとなった。
感動し震える者、涙する者までいた。
そんな中、イジメの対象となっていた生徒が教授の前に行き、涙ながらにポツリとこう言った。
「痩せたい……」
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