第4話 ヒーロー

 旅の途中、ヒーローのいる街に立ち寄った。


 その街は毎日ヒーローが現れるという事で有名な街だ。


 ヒーローのおかげでこの街は、悪者からの被害を最小限に抑えていると噂で聞いた。


 しかし、見渡す限り、街の住民は皆浮かない顔をしているように見える。


 俺は堪らず、住民にその理由を訊ねてみた。


「どうしたんだい? 浮かない顔して。今日もヒーローが大活躍したんだろ?」


 住民は俯きながら答えた。


「あぁ、そうだな。でも、ヒーローなんかいらないよ。はぁ、隣街が羨ましい」


 ヒーローに助けて貰いながら、なんて理不尽な奴だ。


 それとも隣街には、もっと偉大なヒーローがいるのだろうか?


 俺は、住民の言葉が頭から離れず、隣街へと足を運んだ。


 この街の住民は皆笑顔で街も活気がある。


 まさに平和を絵に描いたような街だ。


 やはり見立て通り、偉大なヒーローがいるのだろう。


「やぁ、今日もヒーローが大活躍したのかい?」


 俺が、そう訊ねると住民は満面の笑みで高らかと答えた。


「この街にヒーローはいないよ」


 俺は不思議に思い、辺りを見渡すと一つの看板に目が止まった。


 そこには、こう記されている。


(ここは、ヒーローのいない街。そして、悪者もいない街)

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