第3章

次の日、いつも通り教室に入る。

「柚希、おはよー!!」

「あ、うん、おはよう果恋…未来…」

「ねえ、沙奈ってなんかぶりっ子だと思わない?」

「えっ…?」

「ああいうタイプの子、私嫌いだったんだよねー」

「もうさ、あいつ無視しとこ。関わりたくもないよー。」

「だね!!果恋の意見賛成!!柚希ももちろん協力してくれるよね?」

「えっ…?あ、うん…」


…もう、いじめられるのは嫌だった。

クラスの中で空気のように扱われるのが嫌だった。

それに慣れていた自分が嫌だった。

ただそれだけ。

そんな理由で、私は親友を裏切ってしまった。

唯一の、ただ一人の。

人生で一度会えるか会えないかの親友を捨てた。


その日以降、私は果恋と未来と一緒にいた。

沙奈はずっと一人だった。

私と沙奈は一言も話さないままで。

そして3学期最後の修了式の日。

「沙奈!」

帰りに沙奈を呼び止めた。

「ちょっと話したいことがあるんだけど…いいかな。」

「うん…」


久しぶりに話す。

数か月前までは毎日話していたのに。

「沙奈、ごめんね。」

「なにが?」

「ずっと、無視しちゃってて…」

ここで謝って、仲直りするつもりだった。

前までの私たちに、戻りたかった。

「なに柚希、罪悪感でも抱いてるわけ?」

「えっ?」

「だったらさ、もっとはやく話してくれてもよかったじゃん!!今更さ…もう遅いって…」

「柚希にとっての親友って、そんな簡単に捨てられるもんだった?それとも私は親友でも何でもなかった?」

「そういうわけじゃ…!」

「もういいよ、今さら何言っても遅いし。」

そして、沙奈は私に背を向けた。

「バイバイ、柚希。」

それが、沙奈が私に言った最後の言葉だった。


新学期が始まり、1年生の時の教室に向かう。

朝礼が始まるとき、ふと後ろを向いた。

…沙奈だけ、来ていなかった。

いやな胸騒ぎがする。

「えーっと、新しいクラスを発表する前に、皆さんにお知らせがあります。」

いやな予感は…的中した。


「春休みに、このクラスの遠藤沙奈さんが亡くなりました…」


ザワザワする教室。

そのざわめきを遠くに感じながら、私は…

席を立ち上がり、屋上へ走った。


…私のせいだ。

私がいじめに加担したから。

親友って言ってくれた沙奈を捨ててしまったから。

飛び降りたかった。

死にたかった。

沙奈がいない世界で生きている自分がたまらなく嫌だった。

でも、そんなことはできなかった。

泣きすぎて崩れ落ちてしまったから。


…私は、最悪な人間だ。

親友を捨てた。

唯一の味方を捨てた。

許されることじゃない。

今思えば、死んで償うなんて言えるわけもないぐらいのことだ。

その日以降、私は学校で一人だった。

果恋と未来を避けるようになり、

クラスでも一人で。

私は、私の味方でいてくれて、

代わりにいじめの標的になってしまった沙奈に対して、

恩を仇で返す、っていうどころか

恩を裏切りで返したようなものだ。

こんなことで償われるなんて思っていないけれど、

沙奈が死んだ今、

今まで通り果恋と未来と一緒にいるなんて、できなかった。


…また結局、小学生の頃に戻った

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最低最悪な人生に最高の最期を。 星宮柚希(ゆず🍋) @mandarine_orange

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