第2章

しばらく歩いて、ふと立ち止まった。

「懐かしいな…」

ほんの数年前まで通っていたのに、そう感じた。

不思議な感じ。

いい思い出なんか、ここにはないのに…


中学生になってからも、私は一人だった。

もう慣れていたから苦痛でも何でもなかったし、

むしろこれが普通とさえ思っていた。


いつも通り休み時間を一人で過ごしていた時、

私は突然声をかけられた。

「ねえ、私と友達にならない?」

彼女の名前は遠藤沙奈。

私の後ろの席だったらしい。

その日を境に、

今まで一人だった私は気付けば友達と一緒だった。

果恋、未来、そして沙奈。

3人とも仲良くしてくれて、

こんな私と仲良くしてくれる子がいるんだ…

そう思った。


いつも4人一緒だった。

特に沙奈は仲良くしてくれて、

「私たち、親友だね!」

そう言われたとき、うれしくて泣きそうになった。

でも…

そんな幸せな日々は、長くは続かなかった。


「おはよっ」

いつも通り、果恋と未来に声をかける。

いつもならそこから他愛もないおしゃべりが始まる。

なのに…

2人は私を無視してその場を離れた。

そして、クラスの誰もが私を空気のように扱った。

まるで小学生の頃に戻ったみたい…


でも、あのころとは違うことが一つだけあった。

沙奈は、沙奈だけは、

私と仲良くしてくれた。

「だって、こういうの嫌いだしさ。それに、私には柚希のことを無視するなんてできないよ。」

うれしかった。

こんな私に、まだ仲良くしてくれる子がいるんだって。

こんな子、一生のうちで一人いるかいないかだ。


「ねえ沙奈、まだこんなやつと仲良くしてんの?」

「果恋…」

そこには果恋と未来がいた。

昨日まで仲良くしていたはずの。

「ねえ、それどういう意味?」

「だってさあ、こいつなんかむかつくじゃん?人に媚売ってるみたいでさあー。沙奈もいたし仲良くしてあげてたけど、我慢の限界だわ。」

「ほんとそれなー!まじで無理なんだけど」

「…果恋と未来がどう思うかは勝手だけど、私と柚希が仲良くして何が悪いの?そんな簡単に親友捨てられるとでも思ってるの?」

「…あっそ。勝手にすればいいよ。その代わりもう関わってこないで」


小学生の頃は想像もしていなかった。

いじめのターゲットにされても、守ってくれる友達がいる。

仲良くしてくれる子がいる。

それがどんなに幸せなことか、

それにどれだけ救われるか、

私は分かっていた。

なのに…

…私は、いじめていた子たちよりもひどいことをしてしまったかもしれない。

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