第三話 夕焼けの赤 秋の白

 春の鳥 な鳴きそ鳴きそ あかあかと

        外の面の草に 日の入る夕


 国語のテスト範囲が、この前若山牧水について話しすぎたせいで、終わってないらしい。だから、英語の授業が国語になった。

 いつもより、授業の進行速度も速い気がする。


「野田、二句の『な~そ』は係り結びなんだが、どういう意味だ?」


「禁止」


 今日は他の生徒には聞かず、最初から野田に当ててきた。


「うん、正解だ。それでこの外の面だが、これは『とのも』と読む。注意しとけよ」


 あ、出た。テストに出るときの決まり文句。これだけ手にメモっとこ。


 この句も「春」の字がある。そして、「あかあかと」と書いてあるのでやっぱり春は赤とかピンクなのかなと思う。まあ、この句で赤いのは春ではなく、夕焼けなのだが。

 そんなことを考えているうちに授業は終わりを迎えていた。ノートには罫線しか黒がない。いつものことだ。



「よし。これで、テスト範囲終わりだ。それじゃ、勉強頑張れよ」



 そういえば、この句は、北原白秋の句だよな。名前の通り、秋の色は白なのかな。だとしたら、春は何色なんだろう。


「そういや、榎田。いつ行けばいい?」


 榎田が部活に行ってしまう前に、僕は榎田との約束を思い出し、聞いてみた。榎田は毎日のように部活で、休みは月一あるかないかだってこの前言っていたから、今のうちに聞いておいた方が良いと思った。


「そうだな、そしたら来週のテスト終わりは部活ないから、その時にでも来てくれよ。いや、場所が分からんか。そしたら帰りにうち寄ってけ。案内してやる」


「うん、そうするよ」


 僕は、そう返し、自分の準備をするために、前を向く。


「じゃ、今日は部活あるから」


「おお、頑張れ」と言い、もう一度、後ろを振り向く頃には彼の姿はなかった。いつものことだ。


 今日もまた、あの細道から帰った。本当ならいつもの道でもいいんだけど、僕はあの桜並木を見ていたかった。


 家に帰り、晩ご飯には焼き魚を食べた。その後シャワーを浴びて、眠る前にいつものように日記をつける。

 明日は学校は休みだけど、あの神社に行ってみようかなと、今日の分と一緒に、一日早いけどそう書き込んだ。

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