楽の4 駿と双子の姉妹
「しかし、この学校ってデカイよなぁ」
「そうだね、生徒だけでも5000人くらい、いるんだから驚きだよね」
昼休みに俺は駿と一緒に食堂で昼ご飯を食べていた。
この学校の食堂は、各棟ごとにありそれぞれに特色があることで有名だ。
俺たち、理系の食堂は中華がメインになっていて、結構ほかの棟からも昼を食べにやってくる。
「あっいたいた。ミントに駿!」
見れば、詩織と沙織の姉妹がとれーを持ってこちらにやってくるところだった。
「よう、今日は食堂なのか?」
「そうですよ、姉さんが寝坊したので今日はお弁当がないんです」
やれやれといった感じで詩織が首をふる。
「あんただって寝坊くらいするでしょ!」
「しません」
「ぐっ、可愛くない妹ね」
この姉妹は、見ていて飽きないな。ズボラな姉にしっかり者の妹。よく出来てるな。
見た目はそっくりだけど性格は正反対なんだな。
因みにサイドテールを右で結んでいるのが姉の沙織で左で結んでいるのが妹の詩織だ。
「まあまあ、2人ともお昼食べるんでしょ?座ったら?」
そう言って駿が座るように促す。
俺は元来集団行動が苦手だが、コイツらとは上手くやって行けそうな気がする。
「理系棟の中華定食はやっぱり美味しいね」
「うん、美味い」
「そうですね」
「私が寝坊したお陰ね。感謝しなさい」
「「「違うから」」」
これは、他の棟の食堂にも是非行かねばなるまい。
そんな事を考えていると食堂がザワザワしだした。
「あっほら見て、文系の子たちよ」
沙織がいった方を見ると、男女の集団が食堂に入ってきたところだった。
「あの子でしょ?噂の美少女って。理系の男子達も告って撃沈したって」
なるほど、集団の中心は
集団の中にいても、一際目立っている綺麗な少女。言わずと知れた言葉だ。
周りの男子が、あれこれと世話を焼くのを、あの笑顔でやり過ごしている。
まぁあの笑顔で言われたら何も返せないよな。
「ほんと、女から見ても綺麗よね。あれで優しくて人当たりもいいらしいし入学試験も首席だなんて欠点がないにも程があるわよね」
ほ〜、あいつ頭もいいわけだ。完璧だな。
俺は中華春巻を頬張ってニヤッと笑う。
「あれ、ミントはあの子のこと知ってるの?」
「ああ、新入生代表挨拶してたヤツだろ?みんな知ってるんじゃないか」
「今、あの子を見て悪そうな笑い方してたから知り合いかと思って」
「いや、ぜーんぜん。俺らとは住んでる世界が違うだろ?」
駿って案外鋭いんだな?迂闊なことは出来ないな。
集団は、俺たちから少し離れた席に座った。
ちょうど俺から真正面だ。
俺と言葉の視線が交わる。
一瞬、一瞬だけあの笑顔が消えたように見えたがすぐにいつもの顔に戻って周りの男子と談笑している。
ピロン
「ん?メール?」
『ご機嫌よう』
「ぶふっつつ」
「ミント?何やってるのよ!汚いわね!」
「ごほっごほっ、す、すまん、水くれ」
あいつ机の下でメール打ってきたのか?なんて器用な。
沙織から水を受け取って流し込む。
向こうから話しかけてくることはないだろうが、下手に関わらない方がいい。
「さて、腹もいっぱいになったし俺は戻るわ」
「うん、僕も戻ろうかな」
「私達は、もうちょっといるから先に帰ってて」
「おう、じゃあまだ後でな」
食堂から出るときに、言葉はちらっとこちらを見たが特に何ごともなく俺たちは教室に戻った。
「ミントは彼女はいないの?」
教室に戻ると駿が俺に唐突に聞いてきた。
「いないけどなんで?」
「だってミントって背も高いしカッコいいと思うよ。クラスの女子も言ってたし」
確かに背は高いとは思うけど、別にカッコよくはないと思うけどな。中学時代はそりゃ好きな子くらいはいたけど単にいいかなって思ってただけだし。
「そんなことないと思うぞ。駿はどうなんだ?例えば沙織とか詩織とか?」
「ええ〜僕はほら、ちっさいし童顔だし、沙織ちゃんも詩織ちゃんも幼馴染なだけで・・・」
おっ?真っ赤になって下を向いちゃったぞ。
はは〜ん。これはどっちかに惚れてるな。
「駿〜、どっちなんだ〜」
「うわぁ、違うから!ほんと違うから〜〜」
駿にヘッドロックをかけつつニヤニヤして聞いてやる。
まぁ見てりゃそのうちにわかるか。
「まっ楽しみは後にとっておくことにするか」
「ううっミントはイジワルだね」
涙目で俺を見る駿の頭をくしゃっとして俺はもう一度聞いてやる。
「で、どっちなんだ?」
「ミント!もう!怒るよ!」
「ははは、悪い悪い。」
なんだかんだで高校生活も楽しくなりそうだな。
俺は、プクッと膨れた駿を見てそんな風に思った。
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