喜の3 普通でいいから



「おはよう」

「あっおはよう、ミント君」

「おはよう、詩織さんに沙織さん」


翌日、教室で昨日知り合った3人に挨拶する、ついでに周りにいた他の生徒にも。


明日までは、ホームルームや部活の紹介、各教室の案内などで学校は午前中で終わる。


「ねぇ、ミントは部活とかする人?」

「いいや、俺はバイトも探さないといけないから部活なんかしてるヒマはないな」

「あ〜そっか、バイトかぁ、私も探さないと。お金ないからなぁ」

「姉さんはあればあるだけ使うからないんだと思いますけど?」

「あははは」


全然知らない土地にきて、どうかとも思ったけど案外大丈夫なもんだな。


駿も2人も部活はしないみたいなので部活紹介はスルーして早々と帰っていった。


そして俺はというと昨日の鉄塔の展望台にきている。


「おまたせしたかしら?」

「いや、それほどでもないぞ」

少し遅れてやってきた言葉に返事を返して缶コーヒーを言葉に渡す。


「あら、ありがとう。コーヒーは苦手だけど頂いておくわね」

「いらないなら返せよ」

「いやよ。貰ったんだから私のものよ」

ベーっと舌を出して笑う言葉を見ているとほんとに感情がないのか疑わしくなる。


「自然に笑ったりとかは出来るんだな。違和感なんか全然ないぞ」

「当たり前よ、ずっとそうしてきたんだから。慣れよ、慣れ」


言葉は、嫌いらしい缶コーヒーをあけて俺の隣に座った。

「嫌いなんじゃないのか?コーヒー」

「嫌いじゃなくて苦手なのよ。意味が違うわ」

「めんどくさいヤツだなぁ」

「いいじゃない、迷惑かけてないから」

はいはい、と俺は肩をすくめる。


そういえばどうしてここは誰もがこないんだ?こんなに見晴らしがいい場所なのに。

言葉に聞いてみると、この鉄塔は立ち入り禁止らしい。普段は鍵がかかっているのだが言葉曰く、鍵なんか簡単に作れるとのこと。


俺は聞かなかったことにした。


「ミントは具体的にどうやって私に教えてくれるの?」

「ああ、すまん。まだなんも考えてない」

「・・・だと思ったわ」

「期待通りだっただろ?」

「そうね、期待通りよ」


他の奴らなら苦笑したりするような場面でも、言葉は表情を変えない。


「なあ、ひとまずは俺といるときは無理して顔作らなくていいぞ」

「ミントはそれでいいの?私の笑った顔、好きでしょ?」

「あのなあ、んな作った顔なんかどうでもいいんだよ」

「そう?ならそうするわ」

「あと、その変に丁寧な話し方もいらないぞ」

「・・・注文多いわよ、ミントは」


こちらを向き直った言葉は、全くの無表情だった。

「じゃあ、気にしないからね、あっでも校内ではちゃんとするから大丈夫だからね。校内だとキャラ作ってるし」

おどけた感じで喋っても無表情だからちょっと引く。

余計なこと言うんじゃなかったと少しだけ後悔した。


「スマホの番号とLINEは交換しとくか?」

「うん。ありがと」


よし、なら学校も終わったし何か食べに行くか?って話になり俺たちは、近くのマッ◯でハンバーガーを食べてこの日は別れた。


因みにマッ◯では、言葉はあの笑顔を浮かべていたので周りの男どもの視線が集中していた。






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