第10話 愛する人となら
何分たったのだろうか?
まなみは何を感じているのだろうか?
僕はどうするべきだろうか?
冷たい階段に腰掛けている2人は、話をしていたがまなみはどこか上の空だった。まなみは普段僕の目をはっきりと見て話すが、今はどこか遠い海をぼんやりと眺めている。おそらくだが、僕にいつ告白されるのかということで頭がいっぱいだったのだろう。しかし、一向に告白されない。とうとうまなみはしびれを切らしたのだろうか、小さな声で囁いた。
「好き」
僕は今日告白されることをずっと前から知っていた。しかし、答えを見つけていなかったため言葉が出ない。ほんの少しの間沈黙が続き、沈黙に振られたと思ったまなみの目からは涙が溢れていた。
『それ』をしたいがために今日ここに来たのではないか?
付き合えば近いうちには童貞を卒業できるぞ?
好きでなくても、エロい身体してる女と『それ』をしたくないのか?
僕は内なる自分、いや、本心に負けた。
「ありがとう。僕も好きです」
僕の言葉を聞いた瞬間、まなみの涙は嬉し涙に変わり抱きつかれた。シャンプーの程よい香りと香水の匂いに色気を感じただけでなく、抱き合うことで感じる温もりも心地よかった。
今日1日で手繋ぎとハグという初体験が2つもあった。愛する人となら一生思い出に残る出来事だろう。しかし、まなみを愛していない僕にとっては、初体験が2つ増えただけにすぎなかった。
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