第11話 変化
時刻が22時を回った頃、僕達は水族館から帰ることにした。海岸線を手を繋ぎながら歩き駅へ向かった。付き合う前の館内と比べて、心持ちまなみの手は僕を強く握るようになった。それに身体の距離も近くなった気がする。側から見ればラブラブカップルに違いない。まなみはずっと笑顔だったし、幸せそうだった。もし、僕の本音を知ったらこの笑顔も鬼のような形相に変わるだろうが……
まなみはすっかり彼女モードになっていた。僕の予定を聞くまでもなく、大晦日には2人で年を越し、初詣にも行く計画を勝手に立てた。帰りの電車はガラガラでどこか僕の心を表している様だった。シートに座ったまなみは僕の肩に頭を預けて、上目遣いで聞いてきた。
「私のどこが好きなの?」
好きではなく『それ』をしたいためだけだ
正直、こういう質問めんどくさい
僕は照れた表情をしていたが、心の中ではこのように感じていた。
「一途なとことか、優しいとこが好きかなあ。
それにいい人だから……」
僕はこのような言葉がスラスラと出てきたことに驚いた。そしてまなみにも同じ質問をした。
「優しいし、かっこいいし、なんでもできるし。全部かなあ」
まなみの目に僕はこのように写っていたのか。それとも気を遣った建前にすぎないのか。僕にはその時わからなかったが、とりあえず笑顔で
「ありがとう」
とだけ言った。最寄駅に着き電車を降りると外の風はとても冷たかった。よくこの寒い中海辺で何時間も過ごせたものだ。
もしかすると心の奥底ではまなみに好意を持っていたのかもしれない。そうでなければこの寒さの中、何時間も海辺で過ごすことなどできなかっただろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます