第5話 何故女の人がごはんを作るのか

 今日は、母が友達と遊びに行くと云っていた。私たちのごはんを用意してから出かけて行った。父は休みで、居間でゴロゴロしていた。

 何だか少し、腹が立った。母は時々、パートで仕事に出ている。専業主婦ではない。父が休みなら、父がごはんを用意したって、いいじゃないか。どうせゴロゴロしているだけなんだから。

 やっぱり、男女不平等だ。

 どうして女の人ばっかり、ごはんを作るんだろう。


                  〇


【何故女の人がごはんを作るのか・泉の場合】


 泉、二十歳。今日は久々に友達とランチをしにきた。

「ごはん作りは女の仕事よ。出来合いの総菜は買った事が無いわ」

「結婚してから、夫に風邪をひかせた事は無いわ、これは専業主婦の誇りよ」

 泉は、少し興奮して喋っていました。

 ランチの相手は、まだ独身の同い年の子です。

 一方的に喋る泉に、友達は少し閉口している様子でした。


「こうやって外出する時ももちろん、ごはんを作ってから出てくるわ」

 泉は得意げに云いました。


 一方、泉の夫を見てみましょう。妻が友達とランチに出かけたので、子どもの世話をして昼寝をさせて、一人でのんびり過ごしている様子です。

 そして、妻が用意した、遅めの昼食をとっています。

「あー、外食してーなー」とぼやきながら、食べています。けれども食事を残す事は出来ません。

 三角コーナーの中身は空になっているし、ゴミの管理は泉がしています。

 以前、食事を残したら「体調悪いの?」だの「どの味付けが気に入らなかった?」だの、質問攻めにあったようです。


 時々は、ピザやファストフードなど、ジャンクな食べ物を食べたい。それが泉の夫の本音でした。

「会社の人と飲んでくるから、今日はごはんいらない」と云って時々こっそり外食するのが、彼の唯一の逃げ道でした。


 泉は友達に、本音を吐き出していました。

「時々はサボりたいから、レトルト使っちゃう事もあるよ。あ、これ、内緒ね」


                  〇


【何故女の人がごはんを作るのか・佳代の場合】


 佳代、二十歳。佳代は、料理をしません。家族を含めて誰かが作ってくれるし、あとは外食で済ませるからです。

 最近知り合ったバーテンダーの子に、簡単レシピを教わる程度です。実際に、作った事は無いようですが。

 レシピがあれば、その気になれば出来ると思っています。実際、テレビの料理番組で見た美味しそうな料理のレシピをネットで検索して、見事に作り上げました。

 過去には、好きだった男の子のために、手作りクッキーを焼いた事もあります。

 今は、料理をする必要が無いので、特に食材と触れ合うような事はしない様子です。


 今日は土曜日です。佳代は夕方から出かけるため、準備をしている所です。

 そこへ、佳代の妹がやってきました。

 妹は、「どうしてお母さんが、ごはんを作るのか」という質問をしてきました。

 多分、父親が休みの日にゴロゴロしているだけなのに腹が立ったのだろうと、佳代は推測しました。「いい子だ」佳代は小さな声で、呟きました。


「うーん、確かにお母さんも働いているけれど、お父さんは日曜大工とかやっているから、いいんじゃないの?」佳代は云いました。

「両親が二人とも、納得しているなら口を挟む必要は無いんじゃないかな」とも云いました。

 妹は納得していない様子でした。

「そんなに嫌なら、あんたがごはん作れば?」そう云ったらようやく、妹は佳代の部屋から出て行きました。


                 〇


 真奈美は、父の日曜大工ぷりを思い出そうとした。冬は雪片づけや、家の壁の補修などをしている。ふーん。

 父は重い物は、母に持たせないという信念があるらしい。

 そっか、男女の体のつくりの違いに合わせた役割、って事で……いいのかな?


 母が帰宅した。たまにはお父さんの料理を食べてみたい、と云ってみた。

「お父さんが作ると、材料費ばかりかかるから駄目よ」母は厳しい目で云った。


                  〇



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