第2話 恋と愛の違い(2)

【恋と愛の違い・佳代の場合】


 佳代、十八歳。透明感のある印象を持つ佳代は、化粧がよく映える。それを知っているのか、メイクもファッションも、常に最新で、ばっちりだ。

 けれどもとても冷静に、物事を見ている。恋愛に関しても。女子力の高い外見に惑わされてはいけない、とても落ち着いていて品のある女性です。

 合コンには行かないけれども、男の影が常にある女性です。

 休日の佳代の目撃情報は、一言で表されます。「レベルの高い女にレベルの高い男」と。


 クラスメイトに告白されて断ったその日の放課後、他校の男子とカフェでお茶をするスケジュール。

 佳代を諦めきれないクラスメイトの男子は、その現場を目撃してやっと吹っ切れます。「完全に、かなわない」と、とぼとぼ帰りました。


 今日はその、他校男子とのデート会話をお見せします。


「恋と愛の違い? うーん……好きと、愛してるの違い?」佳代は、少し考えてから付け加えた。

「恋は、相手の気持ちや感情、発言に一喜一憂する事。愛は、全て受け入れる? かな」


「俺からしたら、佳代はいつも受け入れているように見えるよ」他校の男子は云いました。中々爽やかなイケメンです。

「でも、佳代は少し完璧すぎるかな。もう少し、駄目な所も見て見たい」他校の男子は、佳代の目を見つめて云いました。


「私、完璧なんかじゃないよ」少し笑って、佳代は云いました。

 けれども心の中では、違う事を思っていました。「駄目な所って何? 転ぶ? 鞄を落とす? 要は自分が優位に立ちたいだけでしょう」

 もちろんそんな事はおくびにも出さずに、綺麗な笑顔を保っていました。


 数週間後、他校の男子には新しい恋人がいる事が発覚しました。佳代は偶然、目撃してしまったのです。

 男子の方は、「しまった」という表情をしていました。けれども佳代は、表情を一切変えませんでした。

 しかし新しい、というのは語弊があるかもしれません。そもそも佳代はこの男子とは、恋人同士ではなかったのですから。

「お前のために、涙は流さない」佳代は、心の中で呟きました。


                  〇


 頭の中のスクリーンが、幕を閉じた。

 真奈美は「うん? 結局、何?」とクエスチョンマークが飛び交っていた。

「恋は自分主義で、愛は他人の都合を優先するって事?」


―答えは自分で、探してみてね。ナレーションが、響いた。


 何処から聞こえてくるかも判らないナレーションに特に疑問も抱かず、真奈美はナレーション相手に会話を続けた。ナレーター、とは思わなかった。

 あくまで、ナレーション、がしっくり来ると感じていた。


「何だか不自由だね、私には解らない」

 けれども私は最近、クラスメイトの水上君を見かけると、胸がときめく。

 これが、恋、なのかなぁ……?

 独り言なのか、ナレーションに聞いているのか判断がつかない程の小声で呟いた。


 今日は愉しみにしているドラマの放送日だ。今クラスでも話題になっているドラマだ。とりあえず、テレビをつける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る