第7話 「ままならないよ」

そのままの君で


ここはとある喫茶店

いろんなひとがやってくる

いろんなものがやってくる

たくさんの出会いがうまれるところ


僕はここで働いている

二代目だ

僕はまだ全然だめだ

おもいどおりにならない

やっぱり父の時のようにはいかない


僕は父と仲が悪い

店と家

どちらも無口だけれど

お客さんから話しかけられれば

楽しそうに見えた


僕は父が嫌いだった

だけど父のコーヒーは好きだった

父の姿が見える店は嫌いだったが

父のいない店は好きになれた

僕のそんな好き嫌いを父は知っていた

僕にいろんなことを教えてくれたのは

父のノートだ

自分のための覚え書きだとは到底思えない

本当に細かいところまで書いてあった

父がいなくなってからやっと

僕は店にたった



「僕の話をしてもつまらないですよ」


「そんなことない」


「そうかな、君は名前はあるの」


「ツキと小さな女の子が名付けてくれた。そのときにここを教えられた」


「へえ」


「落ち込んだらここにくるといいよと」


「外のお花見に来る子かなあ」


「夜に会ったんだ。月明かりの下で、ひとりきりで歩いていた」


「そう」


「もっと話したい」


「ぜひ、僕で良ければ聞きますよ」


「あ、いやあの子と」


「ああ、そうですね」



ここはとある喫茶店

さいかいのとおり道になっている

寒い冬も暑い夏も

肌寒い秋も暖かい春も

お正月休みはあるけれど

ハロウインも賑やかだ


いつでもここにあって

だれでもここで会って

たくさんのお話がうまれるところ

あなたのご来店をお待ちしております

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「また会いに来たよ」 新吉 @bottiti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説