第6話 「また会いに来たよ」
それでもこの冷えた手が
「また会いに来たよ」
「それでもまた冷えたよ」
この会いに来た手が
「また会いに来たよ」
「いらっしゃい」
「でもやっぱりもう見えない」
「そうですか」
「ねえ?今ここにいる?」
「なんともいえません」
「いないとも言ってくれないんだね」
「ご注文は?」
「カプチーノ」
「かしこまりました」
実はまだ営業開始前だ。マチコは準備をしているマスターを見ながら待つ。時々ポツリポツリと話しながら。
「マスターにあの話はしたっけ?」
「どの?」
「おばあちゃんのアパート」
「ああ!聞きましたよ」
「おばあちゃんとそこの管理人になったの。時々料理作って持っていくんだよ」
「いいですね」
「少し面白いところでね。若くて派手なお姉さんからおじいちゃんとお孫さんのふたり暮らしとか、いつもおびえてる人とか、あとねがらっと性格の変わる人とか」
「怖くはありませんか」
「ううん、全然。嬉しそうにご飯食べてくれてね、そりゃ来ない方がいいって冷たい態度の時はびっくりした。いつもとギャップがすごくて!ここにいるのは悪い男だからって、逆にいい人じゃない?」
「まあ男の部屋に女の子が何度も訪ねるのは、あんまりよくないよ」
「でもまた行きたくなる、これって恋なのかなあ?」
「マチコちゃんの好奇心には呆れる。僕にはよくわかりませんね、悪い男じゃないことをひたすら祈ってますよ」
「ねえねえマスターの恋話聞きたい」
「全部ホラーになりますけど」
「え!?」
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